ぼくらはみんな

船のメンテナンスをするとキッドが言った。
無人島に船をつけ、船大工とキッドと数人の船員が船をいじくりまわす。


サビ事件からずっと船が気になっていたらしいキッドはすぐに落ち着ける島を見つけた。到着まで新しい船内のアイデアを書き出すなどをしていたキッドの顔は不気味な程楽しそうである。キラーはやれやれと見守るほかなかった。

到着前のこと。

カオはこの海の暑さにまいっていた。そこで、島に着いたら水を浴びると良いと提案したことからカオが一度も水に入ったことがないことが判明する。
今までの暮らしを考えれば当たり前のことなのだが、これに船員たちは雄叫びをあげた。

「カオちゃんが泳がない!」
「男の水着を見てどうするんだ!」
「そんな馬鹿な話があるか!」

など。心の内では皆、島に着いたら遊泳するものも出るし、カオも泳いでくれるものと思っていた。泳いだことはおろか、風呂以外で水に身体を浸けたことがないカオは海は遠慮をすると首を縦に振らない。そこでキラーに泣きつく者が出てきた。あつくるしい。

「キラーさん良いんですか!泳がせなくて!」
「あんたがいちばん見たいんでしょう!」
「海に誘って!水着を着せてくださいよ!」

「な…勝手なことを。カオが行かないならおれは」

「見たくないんですか、想像してくだせえ。白い浜でキャッキャする水着のカオさんを」

キラーは想像した。キラーは想像が得意である。合法的にカオの肌を拝むことができるチャンス。正直めちゃくちゃとてもすげー抜群に水着のカオを見てみたいのだが、ここでやすやすと承諾してしまうと面目丸つぶれである。

「しかし水着なんか無いだろう」

「すっぽんぽんで泳げばいいじゃないですか」

「ワイヤーちょっと来い」

ワイヤーに一発拳をぶつけようとしたところ、へえへえとワイヤーは水着を出してきた。それをどうして用意していたかはわからないが、そんな恐ろしいことを聞く勇気は無かった。

「これでいけますねキラーさん!連れ出してくだせえ!」
「カオさんを水着にしてくださいよ!」
「太陽のもとにどうか女を!」

鳴り止まないキラーコールに、渋々(という雰囲気を出しながら)キラーはカオに今一度声をかけに行った。


「他の方にも誘われはしたのですが、わたしは泳げないので…あの」

「あー、その、なんだ、なら、泳げるようになってみないか?…教えてやる」

カオの顔つきが変わった。それならお願いしますと返事をしたカオは気がついていないだろうが、キラーはマスクの下で唇を噛み締めて笑みを堪えていた。心の中ではガッツポーズをした。

「えへへ、泳げるようになればキャプテンの役にも立てるかもしれませんね。頑張ります」

まばゆいカオのハニカミがキラーの良心にダメージを与えた。すまないおれは男なんだ、と誰に言うでも無くキラーは謝っていた。