のどぎり
「キラーさん!キラーさん!ここにどうぞ!」
「は、はあ」
カオは膝をポンポンと叩く。
「カオ、おれはそんな歳の頃では無いと思うのだが」
「良いじゃないですか。いつもならできないことなんですから、お願いします」
渋々と膝に座るが、嬉しいやら恥ずかしいやら。座ればカオは抱いてくるし、また柔らかいし良い匂いがするし、プニプニと二の腕を触ってくるし。
「肌も子どものものですね。いつもとやはり違って、フフフ。くすぐったいですか、やめたくは無いのですけれど」
「いや。いい」
普段こうはいかない触れ合いに照れはするが、悪くはない。
このまま子どものままでも良いかもな。
軽くカオにもたれかかりながら、遠慮気味に柔らかさを感じていたキラーは、緩んだ顔でそんなことを考えていた。
「キラーさんは元に戻ったらできないことで、やりたいことはありませんか。今すぐに戻れないのなら…せっかくですし…」
「そうだなあ…ガキの頃に特別やり残したことも無い」
本当は子どもという理由で風呂にも一緒に入りたいし、飯も食わせて欲しい、ひとつの布団で一緒に寝たい、胸に顔を埋めてみたい、耳掃除して欲しい、爪切りして欲しい、やりたいことなんて限りなくある。
考え込んでいると、カオがモジモジと問いかけてきた。
「初恋はこの歳くらいの時でしたか」
「そうだった気がするな」
そういえばカオは自分の苦い思い出話を知っているのだ。
「初恋なんて叶わないのが相場だ。あまり良いものじゃないぞ」
「ええ!そんな、叶わないものだなんて…」
キラーは振り向き、驚いているカオを見た。これは明らかに初恋を経験済みの顔じゃないか。どこのどいつだカオの初恋泥棒は。
「でも、カレーうどんの…方、その、考えてみれば叶わないのかもしれませんね。なぜでしょう、決まり事…ルールなのでしょうか」
思い出すとグサグサと心に刺さるものがある。少し気を使っているカオがまたグサグサと男の心を串刺しだ。
「カオは…カオも、失恋したのか」
「まだわかりません。初恋はキラーさんですから」
「ハ」
さらりとカオはそう話して、キョトンとしていた。まばたきを3回した。それがとても長く感じる。
ああガキの姿で無ければ今すぐ抱きしめて押し倒すというのに。
「キラーさんですよ」
聞こえなかったと思ったのか、2回カオは言った。カオはパッと笑って。またこの顔がずるいのだなと思う。
「元に戻った時はカオ、100回抱きしめてやる」
「いまではダメですか」
「…子ども扱いするだろう」
「いまは子どもですよ」
ンーと吸い付くように頬にカオはキスをする。幼な子にするようなキスはくすぐったい。
丸く包むようにカオはキラーを抱いた。やはり、普段こんなことができたら良いのにとキラーはカオの腕に頭を預けたのだ。