紛うこと無き天ぷら

「はい、あーんしてください」

「アー…」

サク、と衣の音。揚げたての天ぷらは油の香ばしいにおい。

『しあわせだ…』と幸せところもを味わいながら、キラーはこれまでのことを思い出す。


偶然通りかかった厨房で、カオは天ぷらを揚げていた。カラカラと油の音と匂いはどうしてこうも腹を空かせるのだろう。ふらふらカオに近寄ると、よほど物欲しそうに見えたのか「まだかかりますよ」と声をかけられた。夕飯までに大人数の飯を作るにはまだまだこれからなのだ。

「これは」

「かぼちゃの天ぷらです」

それだけの会話なのに、グッと来るものがあった。
もし普通に家庭を持っていたら、カオにこうして飯のことを聞きながらまったりと過ごしていたりするのかもしれないじゃないか。子どもはきっとカオに似てかわいい。子どもの前でイチャつくのは許してくれないかもしれないから、2人だけの生活でも良いな、なんて。

「こっちは最初に揚げました。そっちは揚げたて、熱いですよ」

「美味いよな、揚げたては」

「このあたりなら大丈夫です」

と、カオは箸で天ぷらをひとつ摘むとフーフーと少し冷ました。

「はい、あーんしてください」

…とこうなったわけだ。予想してなかった“アーン”に照れながら、受け入れた。

「やっぱり揚げたてですよね。キラーさん、好きですか」

「大好きだ。今感動して震えている」

「そんなに天ぷらが好きだとは知りませんでした。今度うどんにはかき揚げを乗せましょうか」

いやカオが大好きなんだがなあと思いながらも、まあいいかとデレデレするキラー。

「よく揚げ物をしていると、皆さんつまみ食いに来られるんですよ」

「へえ」



そうしてキラーはつまみ食いしたことある奴を呼び出して、アーンしてもらったことがあるのか無いのか問い詰めて、白状した奴らを半殺しにした。
ふざけるな羨ましい。油断すると男だらけの船、掻い潜ってカオに甘えたりする奴がいる。羨ましい、おれは初めてだったのに、2、3回してもらった奴もいた。羨ましい。