豈図らんや接吻

トントントントン、包丁の音に誘われて炊事場へ足が進む。そこにはエプロンをつけて朝食の支度をしているカオの後ろ姿があった。

(良い…)

そう思いながら一度立ち止まり、しっかりとエプロン姿を目に焼き付けた。エプロン姿を堪能すると、近寄って背後にぴったりと付く。カオは振り向かずに少し微笑めば、誰かわかった合図なのだ。
小首を傾げるように左頬にチウと吸い付くと「おはようございます」と今日はじめての声が聞こえた。

首肩あたりに鼻を押し当てるようにすれば、なんとも良い匂いがして。

「ふふ、またマスクもせずに。誰か来たらどうするんですか」

「こんな時間にここは来ないだろう。来たところで追い返す」

チゥ、と首に吸い付けば少しカオの肩が跳ねた。それに気を良くすると、キラーは続けて吸い付き、身体に腕を回した。

「朝から酔ってるのか?顔が赤いぞ」

「仕方ないじゃないですか、もう」

包丁を置くと、カオはキラーの手をとった。

「ちょっとだけであれば、このままでも良いですよね」

えへへと笑うカオは身を委ねて、ゆったりとしている。

よし、よし、と意気込みキラーはそろそろとカオの胸部に手を伸ばしていく。

「あ!お味噌汁が沸いちゃう!」

腕を振り解かれ、慌てて火に手を伸ばすカオ。仕切り直しをしようと再び近寄ると「今度は前を向いて良いですか」と言いカオはポスッと胸へ頭を預けてくる。これだと胸へ手を伸ばせないのだが、まあ、いいか。これも贅を尽くしている。

好き好き、好き好きとカオがムギュムギュしてくる。キラーは小さな子どもをあやすように抱きしめながらゆっくり揺れて、カオはそれに身を任す。
顔を挙げてチラリと様子を見てカオはまた赤くなって、顔を隠したり、モジモジとしたり。

「キラーさん、わたし届きません。くちに…」

「フフ、ああそれは、すまん」

笑いながらキラーがしゃがみ込むと、カオは頬にキスをした。こっちじゃないのかと自身の口を指差し、キラーは口に触れるだけのキスをした。

「こうですか」

そう言ってカオは舌先でペロ、とキラーの唇を舐めた。舐められたことは初めてなので一驚を喫する。

「キラーさんに習ってみました」

「ああ、ああカオは…本当に」

ペロ、とキラーは舐め返すと、息をすることすらままならないくらいにキスで襲いかかった。



………

「イチャついてるのバレてないと思っているんだろうか」

「バレバレなのにな」

そんな頃、朝飯前を食べたいのに中に入れない部下の男たちは膝を抱えて入り口前で待ちぼうけていた。