ムーブ
陸。温泉がある街へ。
でかい風呂!水を気にせず使える場!騒げる広さ!
意気揚々と男たちは地を踏んでいた。海賊とはいえ人の子、陸も好きなのだ。
というのは表向きなもので、皆頭の中では女のことで頭がいっぱいだった。温泉街でやれ女を触りたい、嗅ぎたい、抱きたいだと考えていた。禁欲していると爆発するらしい。
「騒ぎは起こすなよ」
とそんな男たちを見送るキラー。
相好を崩しながら『あんたはいいよ、女が側にいるんだから』と皆が内心毒付いた。
「キラーさん、船番はキャプテンがするそうですよ」
「キッドは温泉…水場がダメだからな」
筆舌に尽くし難い笑顔でカオは陸へ降りますかとキラーを誘った。もちろん頷いて、陸へと降りた。
「いろいろな人が入るお風呂なんてすごいですね!前に居た御屋敷では、主人様専用でしたから。一日に8回も入浴される時間があって…」
「楽しそうだな」
「キラーさんの背中を流せば良いですか?何か作法がありますか?一度に人が集まると混雑しそうですね」
「背中を…」
『お背中お流ししますね』とでも言ってくれるんだろうか。おおすごく良い。
………
「気持ち良いですねキラーさん」
「ああ」
ちゃぽん、と音をたてる。お湯が気持ちいい温度で、身体の芯から温まる。
足湯。
「背中を流し合いするはずが…こんな足だけの湯で、足湯なんて開発した奴は誰だ…」
本当なら背中を流され、流して『おおっと手が滑った』とか言いながらあちこち触る算段だったのに。
今は並んで足湯でパチャパチャとしている。
「船にも足湯なんてステキなものがあれば良いですね。そしたらキャプテンも…ううん、足先だけでも、力が抜けてしまうでしょうか」
ウンウンと考えながら、足を揺らしたり、足を重ねたり。その足をぼんやり見ながら、太ももまでまくり上げた足を見ながら、触りたい等ともんもんとする。
「あの」
「ん」
「並んで足湯、わたし好きです。きっとそれは、キラーさんとだから好きで、他の人では駄目なんです」
不純な考えも吹き飛ばす横顔がとても愛らしい。
足を比べて、男と女の差を確かめる。またこうしてゆっくりとしたい。