「キラーさんキラーさん」

武器の手入れをしていると後ろからカオの声がする。さも自分は冷静ですよと言わんばかりに手入れの手を止めず振り向かずで返事をする。内心はカオの声が嬉しくてたまらないのに。

「甘えて良いですか」

「えっああ、ふん、かまわない…」

ぎこちない返事をすれば、カオが背後から腕を回して抱きしめてくる。心臓はバッコンバッコンと脈打っている、カオに聞こえないと良いんだが…と焦りながらもまだ冷静を装うキラー。

最近はこうしてカオは『甘える』ということを練習して覚えているらしい。

手を繋いでは「これで良いですか」と聞き、背中にピタリとくっついて「これで合っていますか」と尋ねた。キラーが無理せず好きにしていれば良いんだぞと言えば「好きだからしています」とカオは頬を染めていた。

「甘えること、上達しましたか?」

と、背中に顔を擦り寄らせながら問われる。それはもう驚くべき成長具合だ。誰に習ったでもないだろうに恐ろしいものである。

「…上達したらやめるのか?」

「それは…お任せします。キラーさんが御相手ですから、キラーさんのお気持ち次第です」

「正直に自分の意思を伝えることも甘える行為の一つなんだぞ」

少しカオは迷っているのか、直ぐには返事が無かった。ふ、とか、す、とか息の音が聞こえたり、服の擦れる僅かな音だけが空を飛び交う。

「上達しても、続けさせて欲しいです」

カオの手の力が強くなる。手入れの手を止めてそのままカオの手に重ねると、背中にまたカオは顔を擦り寄らせてきた。

「は…恥ずかしいので、前を向いていてくださいね」

「顔が見たいんだが」

「今は見せられません」

どんな顔をしているのか見たいのはやまやまだが、自分も見せられないほど赤面していた。

カオの手をさすり触りながら気を紛らすキラーと、甘えを満喫するカオの時間がゆっくり進んでいく。この時間は二人しか知らない。