ほころび
カオは大きな怪我にはならず、すぐにまた歩けるようになるそうだ。骨が折れているのなら代わりに骨を差し出そうかと考えていたジークフリートは、ひとまず安堵していた。
それは使いの者に聞いたことであり、帰ってからというもの、カオの顔を見ていない。
会って良いのだろうか。そう思っているところ、意外にとカオの方から呼び出しがあった。これはカオの最初の命である。
扉をノックすれば、小さく返事があった。顔を見ていなかったが、本当に無事らしい。使い魔としては嬉しいことである。だが怪我をさせたこと、使い魔としては恥である。
部屋に入ってみれば、カオはベッドに横になっていた。
「カオ、痛みはどうだ」
「薬が効いているようです。痛くはありませんよ」
部屋に入ってもカオに近寄らず、扉の前で声をかけた。
「探しにきてくれたこと、運んでくれたこと、御礼を言っていなくて、ありがとうございます」
「要件は、それか」
「だ…ダメですか?呼び付けてしまって、すみません」
おずおずと申し訳なさそうにするカオは布団に吸い込まれていきそうだった。
「主人ならば叱るところではないのか。本来ならカオが血を流すことはおかしい。俺が無理矢理にでも供をすれば良かったのではないか」
ぱち、ぱち、と瞬きをするとカオは不思議そうな顔をした。とてもわかりやすくだ。
「雨が降ったこと、ジークフリートさんのせいではありません。足場が崩れて私が落ちたことも、誰のせいでもないんですよ」
「しかし」
反論するべくベッドに近寄ると、カオのベッドの傍のテーブルにある布が目に入った。
その目線に気がつくとカオは慌ててその布を取り布団の中へと隠してしまった。どうも見たことがあるような色をしている。いや、あの色、あの廃れ具合、間違いがない。
「野暮なことを聞くが、それはもしかすると俺のものではないか」
「あ!う、その、ええと、わ…」
笑ってもいいですよと布団から出されたものは自分のマントであった。やはりこの色は間違いようがない。
しかしこれは切ってしまったはず、と拡げてみればお世辞にも綺麗とは言えないツギハギが縫われていた。
「これは」
「あの、つまり…破いてしまったマントを直そうと思ったんです。そしたらもう、歪になってしまって…新しいものを頼んだところだったんです…すみません」
真っ赤になってまた布団に吸い込まれていきそうなカオは本当に申し訳なさそうにしていた。
「新しいものはいい。これを俺に返してもらえないか」
「怒っていますよね、すみません…」
「怒るものか。俺は新しいものよりこれが良いと言ったんだ。カオ、ありがとう」
すぐに立派なマントが届くのだが、それをジークフリートは受け取らなかった。大事そうにツギハギマントを見つめて、こちらが良いのだと言い切っていた。