ちょうちょう

「これは…」

お使いの帰り、と言うと間抜けのような気の抜けるような言い方だが本当にそうである。頼まれたものを買うだけなら給仕の者が行くのだが、たまたま給仕が買い物を頼まれているところに遭遇したジークフリートは自分が行くと買って出た。カオの好きな茶葉が無くなったらしいと聞けば、自分が行くべきだと思ったのだ。

そして今帰り道、ブチブチと慣れない手つきで摘み取ったのは黄色い花。

「確かカオが、部屋に見合う花があればと言っていた。これはなかなか良いものじゃないだろうか」

花のことはよくわからないが、似合うと思うとカオとこの花を想像した。

「カオは花が好きなのかもしれない。前にも花を見ていた。後で植物を調べよう、この付近で見つけられる花がもっとあるだろう」


そして帰って給仕に紅茶を渡せば、その花は何かと尋ねられた。カオに渡すのだと話せば、どこか優しげに、少しにやけるように給仕は笑った。


「ジークフリートさん、どうしました」

「カオ、これが帰路に咲いていた」

花を渡せば、ここへ来て何回目かわからない不思議そうなカオの顔。

「すまない、あいにく花には詳しく無い。カオが好きな花はわからないのだが、どうだろう」

「花はなんでも好きです。それに、ジークフリートさんから頂いた花…とても嬉しいです、ふふ」

役に立てたことが嬉しく、願いを叶えたことが嬉しく、カオが笑うことが嬉しく、なんとも言えない気持ちになった。

「部屋が華やかになりますね。この部屋によく似合います」

「部屋に合う、か…俺はカオに似合うと思いそれを持ち帰ったのだが」

「え」

もう一度「え」と言いながら、カオは後退りをしながら部屋を出て行ってしまった。

「怒らせてしまっただろうか…」

次は赤い花にしてみようと考えるジークフリートは、静かに植物の本を手に取るのだった。