2月ではじまる話

「俺に?」

「嫌い…?」

嫌いじゃない。今確認をしたのは、本当にバレンタインデーのチョコレートを自分にくれるのかということ。もしかすると皆に渡しているのかもしれないが、少なからず何か貰えるということは好意があるということだろうそうだろう。

本当は嬉しい辛抱たまらん!とカオを抱きしめて喜びたいところだがそうもいかずただありがとうなと受け取るだけになってしまった。

「開けていいか」

と尋ねるとカオは頷く。チョコレートを食べるとホッと安心したのかカオはへにゃっと笑う。

「ウッ…!」

キュウッと身体の中に不思議な感覚が走る。悔しいが俺はカオに熱を上げているし、極稀に見せるカオの笑った顔が好きだった。

「口に合わなかった?!」

「そんなことはねえ!あ、あんまりうめえもんだから驚いただけで、問題無い!」

何故か急ぎ食べてしまったチョコレートはあっという間に無くなってしまった。もったいないことをした。わざと人に見せびらかしながら有意義に食べれば良かった。あと一緒に食べればよかった。私が食べさせてあげるはいあーんとかあったかもしれない。ちくしょう。

「甘い?甘かった?」

「お、おお」

「よかった!それならきっとケイローン先生にも大丈夫!先生、甘党だから…」

ゴン!ガン!ドン!と岩でも落ちてきたかのようなショック。自分はただの味見係だったのかと思うと、膝から崩れ落ちてしまう。

「ありがとう、アキレウス」

今ばかりは美女の微笑みさえも涙が出てしまいそうだ。そんなに笑うな、先生のことで笑わないでくれ。
次の日アキレウスは槍を強く握り、ケイローンの元へと決闘に行くのだった。