ニホンメ


こんなに血って出るもんなのかと腹を抑えて歯を食いしばる。敵はピンピンしてる。ああもう、俺ばっか血を出しちまって、足止めにもなっていないかもしれない。

『はい負けました』なんて引き下がることはできず、槍が折れても俺は喉を引き裂いてやると言わんばかりの勢いで向かって行った。

結果、肩は削ぎ落とされるわ、横っ腹からは血がドバドバ出るわで大敗。後から来た刀に担ぎ込まれて本丸へと還された。俺の先っぽ、ヒビやら欠けやらでビシビシ。

大層な部屋で何やら大騒ぎしていることはわかる。
手入れの部屋かあと思ったのが最後で、俺の記憶は無くなった。


折れたのだ。


折れたって言うのかわからないけれど、とにかく、俺は死を体験する。主、ごめんなあ。



数ヶ月後、一振りの鍛刀が成功する。

「御手杵!」

「うお!」

意識がはっきりするとすぐに突撃して来たのは俺の主らしい。抱きついて離れない。初対面でこれは…もしかして余程槍が欲しかったのだろうか?
ていうか、恥ずかしいんだが。

「ぬしさま、それは前の御手杵の槍と違いますよ」

そう言うのは小狐丸とかいうデカイやつ。
前のってなんだ。

「でもまた御手杵がいてくれる、御手杵!今度は無茶しちゃ駄目だからね!」

「なあ俺何が何だか…」

小狐丸は不機嫌そうな顔で困った顔の御手杵を見た。ぬしさまに抱きついてきて貰ってこの槍また折ってやろうかと念じていたからだ。

そんな中で歌仙という刀が口を開き説明を始めた。

「君は前にもここにいたんだよ。だが折れてしまってね。主はまた槍を作って君を呼び戻すことにしたんだ」

「つまり俺は2代目ってことか?」

「そういうことになるね。記憶はあるかい」

「さっぱりだ。槍として活躍した時の記憶はあるが…ここの記憶は無いらしい」

それを聞いた主、カオはヒクッと肩を跳ねさせてゆっくりと御手杵から離れた。

「き、記憶がないのにごめんなさい…」

「謝るなって。俺、歓迎されてるんだな」

「私はしていません」

小狐丸にピシッと睨みを効かせられた御手杵は早速前途多難だと苦笑いをしたのだった。