裏事情

今日はこの家に知人と、そちらのサーヴァントが一人来ている。どうやらセイバーらしい。

是非手合わせを願いたいと申し出たのだが、すぐにカオからの指令が入った。「今日いらっしゃるお客様が大好きなアップルパイを急いで買ってきて欲しいの」とカオが言うものだから、俺は急いで街へ出たのだった。

アップルパイの香りを漂わさせながら帰って来ると、すぐに給仕が切り分けるために預かった。

「君がジークフリート、カオのセイバーだね」

そう声をかけてきたのは来客の男。

「うちのもセイバーなんだよ。晴れた日には特によく働いてくれるだろ、頼もしいんだ。こんな使い方をしていてはバチが当たるかもしれないが…」

「俺はまだ顔を合わせていないのだが、どこに居るのか教えて欲しい」

「カオのところだよ」

そうか、何故。カオに用事か、まあ、挨拶はするものだろう…挨拶だけだろう。いやしかし、だが、仲が良いのだろうか。

「その、セイバーはカオと顔見知りなのか」

「ああ知り合いだよ。ここへ来るたびに会っているね」

「そそそそうか」

何を狼狽えているんだ俺は。

失礼すると伝えると足は自然と急足になっていた。
カオの部屋に近寄ると中から話し声が聞こえてくる。何を話しているんだ何を。

ドアに耳を近づけて会話を聞くと『……大好きですよ』などというワードが聞こえ、青くなってしまう。

ドアを引くか押すかもわからなくなるくらいに慌てて、ドタバタと音を立ててしまった。落ち着いて入らないと怪しまれてしまう、落ち着いて、冷静に。

ゆっくりとドアを開け、顔を覗かせる。

セイバーらしき男はカオの手を取って跪いている。これは馴れ馴れしい男だと鑑みた。カオも穏やかな顔で座っている。気が付けば眉間にシワ寄せ、セイバーを睨んでいた。駄目だ駄目だと心を鎮めてシワを元に戻す。

リップ音を聴いたジークフリートは胸を衝かれる。

セイバーが部屋を出て行くとそれはもう急ぎ足でカオに向かい、肩を掴んでいた。


「カオが、大好きだと話していたようだが…」

「土の匂いが大好きだと言ったんです」


肩を離すと、カオはポカンとしていた。
穴があったら入りたい。

とんだ勘違いをしてしまったと、ジークフリートは早速さカオから離れて精神統一の花壇作りを始めた。入りたくなるような穴を掘る。

「岡焼きしてしまうなんて竜殺しの名折れだ」

カオが花壇作りなんて突然どうしたのか尋ねてきたが、ヤキモチを妬いた自分の精神統一なんてとても言えなかったのだった。