モビール

「何故!何故!何故!」

「おや、3回も」

本丸の縁側で声が3回響き渡る。
居丈高に長谷部は千子村正を怒鳴りつけた。何故か、それは村正の膝枕でカオが寝ているからである。

「主がどうして貴様の膝で寝ている!」

「huhuhu…春デスから。主も温々したいのデスよ」

「答えになっていないぞ。枕を持ってくれば良いだろう。どうして、何故、主…」

ワナワナと震えている長谷部を見て村正は目を細める。

「ワタシはお誂え向きの枕なのデス」

長谷部は悔しかった。自分こそが枕になるべき存在なのだと主張したかった。しかしここで枕になろうと主を動かせば起きてしまう。長谷部は考えた。

「春といえど、このままでは主が風邪をひいてしまう。俺の上着をかけていくぞ、主の役に立つ方法はこの様に他にもあるのだからな」

急ぎジャージを脱ぎだせば、村正の顔はますます輝いた。

「アナタも脱ぐのデスね!では、ワタシも脱ぎまショウ…」

「脱ぐんじゃない!主の掛布は俺だけだ!脱ぐな、脱ぐなー!」

長谷部のジャージを布団にして、ぬくぬくとカオは寝入っていた。何故か上着を脱いで寒そうに部屋に戻る長谷部とすれ違い、大倶利伽羅は不思議そうに見ていた。