プス
「長谷部さん、上着をかけていってくれたでしょう。ありがとうございます」
「いえ、しかし主。あのような所で昼寝をされては困ります。睡眠は御部屋で、ですよ」
「すみません、春はどうしても気持ち良くて」
ふにゃふにゃと笑っている主はきっとまた寝たい時に、寝たい所で寝てしまうのだろうなと長谷部は思うのであった。
「どうしてもの時は俺を呼んでください」
「長谷部さんが枕をしてくれるんですか?」
「いいえ、主の部屋まで御運び致します」
また主はふにゃと笑った。
「長谷部さんにまた上着を貰って、風邪をひかれては困りますね。これ上着を洗っておきました。お返しします」
上着を渡すと主はそのまま部屋へ戻ってしまった。
長谷部はやれやれとほんの少しだけ笑って、自分も調理場へと向かうことにした。
次の日、長谷部が上着を着た時のこと。
フワリと芳しい。洗剤だろうか、とスンスンと鼻を近づけて嗅ぐとハッとする。
「主の匂いがする」
途端に恥ずかしくなり、これでは変態じゃないかとソワソワとしてしまう。どうして洗濯したものなのに匂いがするのだと考えを巡らせる。
長谷部はこの匂いが好きだと気がついたものだから、余計に頭を悩ませていた。