4月1日

4月1日、この日は特別な日である。

この世界の呪いにより、サーヴァントたちは『リヨ化』してしまうのだ。



ずんぐりむっくりのへちゃむくれになったジークフリートは地面に立てば椅子に届かず、椅子に座ればテーブルに届かず、結果テーブルの上に座り込んでいた。

「すまない…行儀が悪くて、すまない」

「掃除は明日して頂きます」

給仕長はずんぐりのジークフリートにも容赦なく命令をしていた。召喚後、この『リヨ化』という情報は頭に入っていたのだが、実際にはどういうことなのかわかっていなかった。日付変わった頃、霊体に何か変化を感じて目覚めてみればこうなっていたのである。

こんな姿になることはこの世界のサーヴァントの特別行事であると教えられ、外を眺めて見れば確かにリヨリヨしているサーヴァントたちが歩いている。


「ジークフリートさん、ジークフリートさん!」

パタパタと目覚めたカオが慌ただしく走る音がする。勢いよく部屋に飛び込んで来ると、カオは目を輝かせていた。給仕長が「静かに、はしたないですよ」と言う声も届いていないようだった。

「カオ…こんな姿になるとは思わなかった。今日はできないことが多そうだ」

ジークフリートの声も届いていないかのようにカオはすぐジークフリートを抱き上げるや否やかわいい!と一声。

「あのジークフリートさんがこんなにかわいくなるなんて!柔らかい感じ、小さい、かわいい!」

カオはジークフリート抱き上げながら脇をモミモミと触って、掲げてずっと眺めている。

「お、降ろしてくれ…」

ゆっくりテーブルにジークフリートを降ろすと、椅子に座って頬杖を付きまだ眺めてにこにこするカオ。恥ずかしくなり、ジークフリートはカオから目を逸らす。

「ジークフリートさん、こうなって身体は他に変化ありませんか?」

「無いようだが、その…ウ」

話しながらもジークフリートの頬を突き、カオは愛でていた。頭を撫でたり、腹を突いたりもした。
コホンと咳払いをひとつした給仕長。

「カオ様、それは『ジークフリート』なのですよ。よく御考えになってください」

「わかっています。でもこの日を楽しみに待っていたんですから」

ジークフリートをぬいぐるみのように抱き締めて後頭部を撫でる。ジークフリートはカオの胸に顔を埋めているようでとても申し訳なくなった。不可抗力だ、本当にすまない。

「お茶にしましょう。今日はカヌレがあります」

「俺は大丈夫だろうか…」


そんな心配の中、カオとのお茶会。またテーブルに座って申し訳ないという気持ちのジークフリートにカオはカヌレを差し出した。

「はい、あーんしてください」

ジークフリートは恥ずかしさでカッと顔が熱くなった。昔のようにままごとをしているつもりなのか、赤ちゃん扱いをしているのか、ぬいぐるみ扱いをしているのか、カオは男にそんなことをしているつもりは無いのだ。

もうどうにでもなってくれ。



「今日は一緒に寝ましょうね」

「ああ好きにしてくれ…」

一日の終わりにはすっかりぬいぐるみ扱いを受け入れているジークフリートと、愛で満足したカオがベッドに並んでいた。

毎日この姿なら良いのに、とカオはジークフリートを包み込みながらすぐに寝入ってしまった。



カオがンンっと寝ぼけながら鼻を擦り寄せたものはとても硬かった。これは元に戻ったジークフリートの胸板である。ぺたぺたとカオが触って目の前のゴツイ何かを確かめる。

朝の悲鳴は鶏よりも声高々に響き渡った。

「ジークフリートさんと、私…!寝、そんな…」

「だから言ったんだ」

「止めてください!というより、戻ったならその時に教えてください!」

「す…すまない、カオの…寝顔を眺めていた」