はくちょう
竜の群れが飛んでいた。
この時代の生き物はなんと穏やかないことだろう。
人は幻想種を大切にし、狩ることをしない。また竜も人を襲わず暮らしている。自分の世界でもそうであったなら良かった。
しかし最近竜で騒がれていることがあるのだ。
大人しく暮らしている竜の森が荒らされていたり、落石が起きたりしている。もしかすると良くない竜が居るのではないかと噂が立っているのだ。竜の住処を荒らす者の仕業かもしれないが、どちらにせよ調べる必要があった。
そこで竜殺しの英霊であるジークフリートに声がかかる。
今日は様子を見に現地へ行くことになった。ジークフリートは剣を研き、籠手をしっかりと装備した。
「カオも行くのか?」
「もちろんです。動けなくなったらどうするんですか」
単独行動では魔力がどこまで供給できるかわからない為、カオもついて行くことになった。ジークフリートは気が進まないが、こればかりは仕方がない。もし何かあれば宝具を使うこともあるかもしれないのだから。
「竜が暴れるなんて、私は聞いたことがありません…何かの間違いだと良いんですが」
「俺が生きていた所と本当に違うようだ。竜は退治するものとして扱われてばかりだった」
「竜を傷つければ土が悪くなると良います。退治だなんて、誰も望みません」
カオは俯き心臓をバクバクとさせていた。もし竜殺しをしなければならないとなれば、覚悟しなければならないのだ。
「カオ、俺から離れるな」
「は、はい」
森をしばらく歩いた頃、パキパキと枝を折るような音がした。ジークフリートが剣を構えるとカオはジークフリートの背に隠れる。しかしついに竜が近づいて来る音が聞こえてきたと思っていたところに現れたのは、キューイと鳴く小さな竜だった。
「イグアナのような大きなトカゲのような、これは……」
「竜…竜種だとは思うが……子か?」
構えていた剣を降ろすジークフリート。緊張の糸がほぐれ背にカオを感じると少し心臓が速くなった。
「ジークフリートさん、あの子を殺すのですか」
「グ……」
「キューイ」
竜の子はひたすらにかわいく鳴き、2人を見つめていた。