良い顔だ
「体に良い。たくさん食べると良い」
てんこ盛りのごはんに思わずオオと声が漏れた。ここはこれが普通盛り。
「サーヴァントに食事は必要無い、成長もしない、何より貴方は細くない。問おう何故ここへ来た」
食事処で働くパーシヴァルはジークフリートにそう尋ねた。
「食事は…学べと命を受けたからだ。俺は何でもうまいと言うらしい…そんなことはないと思うのだが、他の味を知って欲しいと言われた」
こんな風に食べたいと願う者を初めて見たパーシヴァルはぽかんとしてしまった。パーシヴァルのマスターはここの店主である。店主は何より人に食わせることが好きであった。普通の店ならば勝手に大盛りにしてしまえば怒られるはずであるが、パーシヴァルの勝手に大盛りを許した程である。
味の追求とは、まさか他店のスパイではあるまいな…と疑いの目を向けていると、ジークフリートはパクリパクリと食べ始めた。
「うまい…これは何という料理だろうか。名前を教えて貰えないか」
「ただの酢漬けのキャベツだが」
「フム…」
メインの肉や魚のことは聞かずにおかしな奴だとパーシヴァルはまたぽかんとした。きっと、ただ蒸したもの、ただ焼いたものと思っているのだろう。
完食したジークフリートはすぐに店を出た。
ついついジークフリートを目で追ってしまったパーシヴァルは彼が電話をかけ、照れている様子を見てしまう。誰にかけているのだろう。
店の前でジークフリートはカオに電話をかけた。
カオの声が聞こえると、声をやわらげる。
「カオ、酢漬けのキャベツがうまい。カオが作ったそれを食べたい」
『いきなりそんなこと…ジークフリートさん、玄関の灯りはつけておきますからね。あまり遅くならないように…』
「!心配してくれているのか!それは、カオ…欣幸の至り、だな」
照れたその顔は見ることも、見られることもない。ただ見ていたのはパーシヴァルだけであった。