メッキ
「完璧……」
お腹はおやつ時前、カオが今日作っていたものはプリン。いつもならば「す」が入りまくりのものになるプリンが、今日はどうだろう、完璧なツルツルプリンになっているではないか。
「ジーク!ジークフリートさん!どこに居るの!」
パタパタとエプロンのままカオはジークフリートに報告しようと調理場を飛び出した。すれ違う人にジークフリートの居場所を聞くが、草むしりをしていた報告や、池の方に居た報告や、巣箱を直していた報告や、様々であった。一体彼は一日中何をしているのか、カオは不思議に思いつつジークフリートを探し回った。
「ジークフリートさんを見なかった?プリンができたのだけど」
「いえ、お見かけしましたらお伝え致しますね。ふふふ、カオ様が会いたそうにしていらっしゃると」
「そんな言い方…!まあ、間違いではありません…あの、プリンがあるから調理場へと伝えてください」
給仕がそうしてにこにこと去って行く。確かに今探し周って、ものすごく会いたそうに見えるかもしれない。でも、それは、プリンを見せたいからなのであって他に意味は無い。意味は無い!そう心に叩き込んで、心臓の高鳴りと赤面を落ち着かせると、カオは庭を覗いたり倉庫を覗いたり、あちこちを探した。
夕方、ついにジークフリートは見つからなかった。
諦めてカオが調理場へ戻ると、そこにずっと探していたジークフリートが何かを食べているじゃないか。
「ジークフリートさん!随分と探したんですよ、どこに居たんです」
「俺は今日、水路の掃除の手伝いに…すまない、伝えておけば良かった」
そういえばそのようなことを父が言っていたとカオは数日前のことを思い出す。そんなことを思い出していれば、ジークフリートは照れくさそうに目を泳がせた。
「カオが会いたがっていると…給仕の者が伝えに来た。その、すまない。すぐに戻るべきだったのだが、半端なままでは戻れず…掃除を終わらせていた」
「ほ、本当に会いたがっていると伝えたんですか!違います!私はただプリンができたからと、そ、それだけです!」
「そうだ、うまかったぞ」
ジークフリートのその言葉と食べ終わった容器にカオはハッとする。
「プリン食べちゃったんですか?!」
「食べておくようにと言われて…」
「せっかく完璧にできたプリンを!ちゃんと見ましたか?綺麗なあのツルツルを!」
わからなかった。ジークフリートには「いつも通りのうまいもの」としかわからなかったのだった。
「その、すまない、わからなかった」
「……どちらにせよ、ジークフリートさんに食べてもらう予定でしたから良いんです。また作れば良いんですから」
「すまない、カオの作るものが何でもうまくて…」
その日、夜はハンバーグになった。
ドイツといえばハンバーグと意気込んだカオのハンバーグは、つなぎを入れたはずなのにバラバラ。ただ挽肉を炒めただけのようになってしまったハンバーグをまた、ジークフリートはうまいうまいと完食するのだった。