鎖で繋いで
今日は町の祭り事のようなイベントがある日。
サーヴァント同士で競うのだ。
決闘か、学問か、スポーツか。ジークフリートには初めてのイベントであり、何をするのだと華やかな様子を見てカオに尋ねていた。
「腕相撲です」
「腕相撲」
カオの答えをジークフリートは繰り返し、ポカンとした。剣術ならと思っていたジークフリートだが、腕相撲とはどうしたことだろう。それをこんなにも祭りのように騒いでいる町の住人も、世界も、平和だ。
「たかが腕相撲、されど腕相撲ですよ。案外盛り上がるんです。……賭け事にもされていたりするようで、テーブルなんて毎回のように壊されて」
サーヴァントたちは皆強制のように参加させられている。ジークフリートは、自分も参加するのかと思うと何とも言えない気持ちになった。腕相撲とは…
「前に会いました、ガウェインも参加されています。ガウェインは優勝したこともあって、あの時は相手のバーサーカーが優勝候補だったのですけど」
「カオも見に来るのか」
「はい、もちろん」
ジークフリートのやる気メーターが少し上がった。
そうだ俺はカオのサーヴァントなのだ、今年は見るものが増えているじゃないか。
「ジークフリートさんは初めてで戸惑うこともあるかもしれませんが、きっと大丈夫ですよ」
「カオは、俺が勝てると思っているのか」
「勝てると思っています。それはだって、ジークフリートさんですから」
ジークフリートのやる気メーターはグッと上がった。
優勝して勝利をカオに持ち帰ろうと思った。信頼されている、期待されているのならば全力で向かいたい。
腕相撲大会はトーナメント戦で、あらゆるサーヴァントが爆発や砂埃や稲光を起こし勝ち進んでいった。耳を聾する悲鳴に救護班が走り回り、タンカーがいくつも出る。
攻撃ではない宝具ならば使用もアリ、スキル使用もアリの為、筋力が低い者でも勝ち進むことができた。
ジークフリートも何とか勝ち進み、次は優勝候補のバーサーカー、ヘラクレスとの勝負になった。
あまりにも勇ましいヘラクレスに、ジークフリートは怖さすら覚えた。
「強敵だな…」
案じるジークフリートの手を握り、カオは微笑んだ。
「私は応援していますよ。ジークフリートさんは、強くて優しい私のサーヴァントなんですから」
ジークフリートのやる気メーターは振り切れた。
信じられない力と早さで、ジークフリートはヘラクレスの腕を倒した。鍛冶場の馬鹿力、豚もおだてりゃ木に登る、恋は盲目。
普段の格式ばっている姿とは違いフーフーと息を荒くするジークフリート。負けたことに驚きながらも、何かを感じとったようにヘラクレスは爽やかに負けを認めていた。
「優勝はサーヴァント、ガウェイン!」
大会はガウェインが優勝、惜しくもジークフリートはガウェインに敗れてしまった。それもそのはず、今日は雲ひとつない晴天。太陽の下でガウェインは最強なのだ。怪物相手でも造作もない力を発揮するガウェインに、今はバーサーカーですら敵わない。
「レディカオのサーヴァント、貴方も素晴らしかった!」
と、爽やかに嫌味なくガウェインはジークフリートを賛称した。嫌味なく、握手をしようとしたガウェインだったがジークフリートは応えられない。ジークフリートは腕を折られる程のすごい力で腕を倒され、テーブルも微塵、地面に薙ぎ倒され、使える腕が無かったのだから。
「大丈夫ですかジークフリートさん、大丈夫には見えませんが…」
「力及ばずすまない。強いな、彼は…」
まるでゴリラと周りに言われるガウェイン。彼が大会で優勝する理由は時間帯が関わっている。昔は早朝から開始していたところを、午前9時からの開始にずらされた頃からガウェイン無双は始まっていたのだ。
「いいえ、さすがジークフリートさんでした」
「そんなことは…」
「勇ましくて素敵で、私のサーヴァントは1番かっこよかったですよ」
面目次第も無いと思案に沈んでいたジークフリートだったが、カオの言葉に喜ばしく口元が綻んだ。
異とする大会はこうして幕を閉じた。
腕を折って帰って来たジークフリートを、屋敷の者はああなんて馬鹿なことを!と笑い飛ばした。
これからゆっくり治癒に入るのである。