はなさないで

馬鹿な大会から数日。
ジークフリートの腕が戻った頃、屋敷にひとつの影あり。道場破りのように「たのもー!」と声を上げている男を最初に見つけたのは、バラの手入れをしていたジークフリートだった。


「何か用事か」


そう声をかけると、男は堂々と話始めた。


「ここにヘラクレスを倒したサーヴァントが居ると聞いて来た!俺がヘラクレスと対決したかったんだが…例のサーヴァントはどこだ、まずはそいつと闘いたい!」

「俺のことだろうか」


男は名をアキレウスと言う。
アキレウスはジークフリートの帽子を被ってツナギを着て、まるで庭師のような格好を端から端までじっくり見ると信じられないという顔を見せた。

「……見掛けは関係ねえよな、よし!勝負してくれ!」

アキレウスがジークフリートに腕相撲を挑むと、いともたやすくジークフリートに勝ってしまった。

「どういうことだ!手を抜くな!」

「手加減などしていない、あなたが強いということだ」

「もう一回だ!」

二回目の腕相撲にも、アキレウスはジークフリートに勝ってしまう。どういうことだとジッと手を見る。ヘラクレスが弱くなっていたのだろうか?アキレウスが三回目の勝負を挑もうとした時、カオが窓から顔を出した。

「ジークフリートさん、お茶にしましょう」

あれがマスターかとアキレウスが考えて間も無く、ジークフリートにアキレウスは負けていた。先程と同じ者とは思えない力だった。唖然とするアキレウスに、ジークフリートは帽子を脱ぎながら謝った。

「すまない、呼ばれているようだ。君が二回勝った、君の勝ちだ」

「あ、ああ…そうか」

目つきが変わったとアキレウスは語る。アキレウスには何が彼をそう変えたのかわからないが、ヘラクレスに勝てたことは理解できた。また別の勝負を挑もうとアキレウスは考え巡らせ、今日のところは帰って行った。何度も頭を回らせ、ジークフリートの背中を見ながら。


「誰が来ていたんですか?」

「英雄だ」

フウンと紅茶を飲むカオは第二回腕相撲大会を知らない。