わたしをつくる

やわらかい雨が降っていた日中が終わり、夜。涼しいような寒いような空気に一番触れている鼻が冷たくなった頃にカオは灯りを消した。寝ようかなと一考したものの、ふと切なくて。ねえどうしてと自問するも答えは無い。布団から抜け出して、真っ暗な廊下をぶらりぶらりした。

「ジークフリートさん、居ませんか」

部屋の前で声をかければ、すぐに扉が開いた。いつも夜何をしているかわからないけれど、起きていてくれたジークフリートを心丈夫に思う。

「カオ、どうかしたのか」

「何も。少し眠れないだけです」

「腹が…減っているのか?」

腹が減っていると眠れないらしいぞとジークフリートは話した。そんなことでここには来ませんとカオは首を横に振る。

「眠れないなら、一緒に居たいと思って」

そう明答してやれば、ジークフリートは面映ゆいようでほんのり頬を染めていた。仏頂面だと言われるが、ジークフリートはふとした瞬間に感情を顔に出す。優しい顔も困った顔も、少し難しい顔も、カオは知っている。

「カオが好きなだけ居てくれて構わない」

「ずっと居ても?」

「構わない」

部屋の中に入るとベッドに腰掛けた。他に腰掛けるところも無いこの部屋は、ただジークフリートが着替えて眠り、目覚めたら着替えるだけの部屋になっている。自然とカオの隣に腰掛けたジークフリートにベッドがキシリと音を出す。

「時々考えるんです。もしここに来たのがジークフリートさんじゃなかったらって」

「他の英霊が良かったのか?」

「初めはそう思いました。私はガウェインのような人が来て欲しいと思っていましたから」

少しショックを受けたような顔をして動揺しているジークフリートにカオは慌てて訂正をする。

「初めはですよ!今は…ジークフリートさんで良かったと思っています。いいえ、他のサーヴァントではきっと駄目だったでしょう」

ホッとするジークフリートの肩に頭を預けると、カオは欠伸をして眠りを誘った。枕を使うといいとジークフリートが提案すれば、カオはベッドに横になり素直に枕を借りる。

「占領してしまってごめんなさい」

「気にすることはないさ、おやすみカオ」

スウッと寝入ってしまったカオに一笑する。ジークフリートはベッドから降り、ベッドを背もたれにして眠ることにした。


朝に頭をコショコショと弄られて目が覚めた。
見上げるとカオが「騎士のくせに油断していましたね」とくすくす笑っていた。

いいじゃないか女に油断しても。惚れている女に警戒心なんて抱か無いのだから。