お砂糖入れよう

ガウェインが珍しく一泊していくとのこと。
嬉しい嬉しいとカオは一層喜び、幼少期のことを思い出しては話していた。昔のことなど知らないジークフリートはどこか少し寂しいような、ポツン置いて行かれているような心境にあった。

そんな中で、ふと疑問に思っていたことをジークフリートは問うた。

「カオ、俺といる時にはガウェインと呼び捨てていたが…」

「ああそれは、ふふ。昔は呼び捨てに呼ばれていましたから」

「言っちゃダメですよ!そのことについては!」

「良いではありませんか。そういうことなのでしょう」

ガウェインとカオが二人で二人だけの秘密を持ち合わせているらしい。一体どんな理由があるのだと、ジークフリートはとてつもなく気になってしまった。しかしまるで二人の前には入れない壁があるようで問い詰めることをやめてしまった。


カオが風呂に入ってしまい、一人で本を読んでいるところにガウェインはやって来て一笑した。まぶしい太陽スマイル、まさに太陽の化身、なんと爽やかなことだろう。

「気になっているのではないかと」

「何をだ」

「先程のことです。何故呼び方を変えたのか、と」

気になっていないと言えば嘘になるが、カオが秘密だと言うのなら無理には聞くまいとジークフリートは話した。するとガウェインはクツクツと笑って、話しても良いことだと明言した。

「私からやめるように懇願したのです。それはレディカオといつか相思相愛の者が現れた時に、呼び捨てで呼ばれていては嫉妬の的になるでしょうという事由で」

「相思相愛」

「ええ。いやしかし、本当に嫉妬されてしまうことになるとは」

ガウェインがどこまでわかっているのか把握はできないが、その太陽の顔は光輝あるものだった。爽やかに、嫌味なく、この男はまた『そういうことでしょう』と面責するのだ。


「や、妬いているとは…気には、したのは事実だ…その、俺のことは呼び捨て無いからな…だから」

「それを世間一般では妬心と呼ぶのです。カオにはまったく、気をつけるように言っておいたのですが」

そう話すガウェインの顔は笑っている。
まるで家族や兄弟を想うように、ガウェインは嬉しそうだった。あたたかな陽だまりのように今まで見守ってきたのだろう。


「昔は私の妻になると言っていたというのに、成長しましたねカオは」


ピシリ、と聞き捨てならないことを言われて石になったようにジークフリートはガウェインを正視。

「カオが…?」

「ええ、よく私の後ろについて来ては『ガウェインの奥さんになりたい』と笑っていたものです」

呼び捨ての件よりもずっと大きい青い炎を燃やすことになったジークフリートは、もっと話を聞いておく必要があると情念を抱くのであった。