キスの日
「昨日はキスの日だったらしいですよ」
「変わった記念日だ」
暖かくなりすっかり着なってしまったセーターを仕舞い込みカオとジークフリートは閑談をする。
「生前のジークフリートさんはきっと沢山キスされる機会があったでしょうね。人の役に立てば、きっと綺麗な女性から御礼もされたでしょう」
「あ、あまり揶揄わないでくれ。そう嬉しいものではなかった、あれは……いや、話すのはよそう」
椅子にどさり、ジークフリートは座り込むと黙す。気色がすぐれないところを見ると、本当に良い思い出では無さそうだ。
そうして昔の思い出に沈潜していたジークフリートにふとした考えが過ぎる。
「カオは」
「はい」
「カオは、その、することは……あるのか」
顔を逸らせて藪から棒に直言するジークフリートに狼狽えながらカオは否定した。
「ありませんよ!だ、誰にでも私が御礼のキスだなんて!だ……第一、御礼になるなんてそんな自惚れたこと考えていません!」
「俺はそうは思わない。俺は……カオにそうして礼をされるのなら、どんな富より欣喜する」
見る見るうちにカオは赤くなってしまった。そんなカオを様子がおかしくなった、と心配から近寄るジークフリート。真っ直ぐに見つめられてカオはますます恥ずかしくなる。
「俺は見返りのために何かをしているわけではない。だがカオに……」
「ジークフリートさんにはいつも感謝しています。だから、もちろん、その、……好きにどうぞ」
ゆっくり触れるようにちぅと口付けられると、褒美を渡しているんだか貰っているんだかわからなくなった。