なにを補う

クラクラとするこの匂いはなんだ。
ジークフリートはカオがよく薬を調合したりする部屋へと向かった。どうもここからクラクラとする匂いがするのだ。

「カオ…」
「ジークフリートさん、おはようございます」
「おはよう…その、この匂いは一体なんだ」

部屋の奥まで入ることができない程、酷く匂う。ジークフリートはドアに半分隠れながらカオに声をかけた。

「これは竜除けの花を…もしかしてジークフリートさん、この花が効いてしまっています?」
「……そうだろうか、とにかく酷く気分が悪い」
「すぐに終わります。ごめんなさい、ジークフリートさんにも効果があるだなんて…あ!」


耐えられなくなったジークフリートはその場で倒れ、気を失ってしまった。


ジークフリートの目が覚めた時、それはベッドの中であった。そよそよと風がカーテンを泳がせている。身体は起き上がらず、見える範囲内には誰も居なかった。まだ目を開けていることも苦痛であり、再び目を閉じるとガチャリとドアが開く音が聞こえた。

「まだ目が覚めませんね」

カオの声だった。

「ジークフリートさん」

手を握られた。カオの手が自分の手に絡まると、少し嬉しい。

「カオ…」

か細い声を出せば、カオの力が強くなった。

「ジークフリートさん!大丈夫ですか、身体…どうですか…?」
「俺はどうなった…」
「竜除けに耐えられなくなって倒れたんですよ。ジークフリートさん、一日目が覚めなかったのです」

そうか、と返事をすればカオが胸に頭を預けてくる。できることなら抱き締めたり頭を撫でてやりたいところだが、身体はやはり動かなかった。

「竜除けのように珍しい植物は、薬にせず魔力を通すことで強い効力が出せます。それで、わたしが試していたのですが」

ほうと大きく息をした。ジークフリートは目を閉じると、ひとつ頼みがあると口に出した。

「魔力も細々としか受け取れないようだ。しばらく、頼む」

ジークフリートが手を握り直してくると、カオは深く頷いた。

「パスが邪魔されていますね」
「ん、」

下唇を噛んだ後、自然とカオは唇を潤し、ジークフリートの口を吸う。
そのまま、古典的な方法の魔力供給に安心したジークフリートは、すやすやと人間のように眠り込んでいった。

その日は真っ黒ハンバーグに、餅のようになったポテトが夕食。目覚めたジークフリートは飯でも魔力が補えると喜び食べきったという。