つちふまず

「もうそんな歳じゃないかな」
「そんなことない、うれしい!」

シエテがカオと話している様子を岡目にシスは耳を澄ましていた。何かを受け取っているようだが、話だけでは何かわからない。

「ほらほら! シスくーん!」とシエテが呼ぶので仕方なく、仕方なく、あくまでも仕方なくカオとシエテの方へ向かうとカオが大きなぬいぐるみを抱えていた。

「これシス」
「俺……?」

カオの言葉に何のことだと首を傾げる。

「シスくんが留守の間はこれをシスくんだと思ってねーって。ほらほら似てるでしょ、髪の色と同じ色で、ぬいぐるみにしてはムスーとしてて」
「かわいいよ、わたしもシスににてると思う」

ぜんぜん似ていないだろとシエテに怒る前にカオにまで似てると言われては口出しできず、シスは言葉を飲んだ。

「大切にする!」
「よかったよかった。もうそんな歳じゃないって言われたらどうしようかと思っていたんだけど、よかったねシスくん」
「なにがだ」

シエテが目でホラッと合図をすれば、カオがしっかりとぬいぐるみを抱きしめている。

「シスくんだと思って大切にしてね」
「うん、シス大切」
「ぬいぐるみちゃんにチューして一緒に寝てあげてね! シスくんだと思ってさ、ネ」
「妙なことを教えるな!」

ポカ!とシエテの頭に制裁を加えると、わざとらしくシエテが悲しがった。じゃあ本人にしてあげてとシエテが助言すると、再びシスの拳がシエテの頭に降りた。



「シス、シース」

カオはその後もずっとぬいぐるみを抱きしめたままで、頬擦りしたり膝に乗せたりしていた。本物が今は近くに居るというのに、ぬいぐるみとベタベタしている。シスとしては別に構わないのだが、普段ならば自分にベタベタとしてくるはずなのにと妙な気持ちになっていた。
「シス、ずっといっしょ」と言ってぬいぐるみの頭を撫でているカオに、いやいや俺はここに居るのだとシスは難色を示す。

「いっしょにねようね、今日はいっしょ」

その一言にシスは音を立てて立ち上がり、慌ててカオを引き止めた。

「なっ、そ、それは、駄目だ」

目をまんまるにさせてカオは驚き、どうしたのかシスに尋ねた。黙ったままシスは首を横に振る様子を見ると、カオはぬいぐるみを置いてシスな手を握る。何を話すでもなく、二人はしばらく並んで過ごし、眠たくなるまで星を数えた。