はとぶえ
「シス、触っても良い?」
頷くとカオは手を握りしめてきた。カオは突然抱きついたり触れたりすることをしなくなり、確認を取るようになった。何故だか前よりも緊張してしまうが、悪くはない。
「今日はついて行っても良いところ?」
「いや今日は……」
「今日は街のパトロールだし、良いんじゃないかな」
どこからともなく現れて、話に割って入ってくるシエテを睨むシス。
「最近盗みが多くてさ。犯人探しを頼まれているんだよね」
「危ないだろう」
「シスくん仮面つけて行く気でしょ。そんな怪しい人がウロウロしてたら出るものも出ないし、怪しまれないためにも良いんじゃない?」
それとも素顔で行ってくれるの? とシエテはウィンクをした。仮面だけは勘弁して欲しいとシスは眉間に皺を寄せる。
「危険だと判断したらすぐに帰すからな」
「わかった、でもシスと街に行けるの、うれしい」
ふへへとカオが微笑む。まあ本当に危なくなったら俺がなんとかするけどね、とシエテは思案する。
街は思っていたよりも人通りが多く賑わっていた。カオは見たこともない光景に目を輝かせてキョロキョロとするばかり。見たこともないお菓子のショーケースにすごいすごいと指を刺して喜んだ。そんな時、ドン! とカオの肩に男がぶつかる。衝撃でカオは尻もちをつき、男はわざと肩を押さえて痛がって見せた。
「あーあーこれはもう動かねえ、慰謝料貰わねえと」
「す、すみません」
男はカオの手首を掴むと、連れて行こうと無理矢理に引っ張った。「こっちに来い」と男が声を出すと同時にシスが男の手を捻る。
「カオをどうする気だ」
「なんだお前……って、イダダダ! 離せクソ!」
男は少しシスが力を緩めた隙に腕を振り払うと、路地裏へと逃げて行った。
「カオ、事件になれば目立つ」
「わ、わかった。ごめんなさい……」
しょんぼりとするカオを見て、フウとため息ひとつ。そそくさと歩きだそうとするカオの手をシスは掴んだ。
「は、離れるな」
「! うん、シスといる」
手を繋いで歩くと、カオはシスの手の冷たさを伝えた。フンとそっぽを向くシスに、カオは「さっきはありがとう」と微笑む。
そんな様子をサングラス越しに見る影がふたつ。
「わー! まさかシスくんから手を握るだなんて、これは良い傾向だねえ団長ちゃん」
「そうですね、初デートとしては最高なんじゃないですかねえ」
変装し後をつけてきたシエテと団長は双眼鏡で二人を観察していた。これは二人の企みであり、策略であった。名付けて『シスくんとカオちゃんの急接近大作戦』である。犯人探しを言い訳に二人をデートさせて接近させようという、何とも単純な作戦だ。
「変な人に本当に絡まれた時は焦りましたけれど、シスさんはちゃんと守ってくれましたね」
「予想外だったねーでも、ナイス変な人!」
この作戦がどう動いてしまうのか、この時誰も知る由もなかった。