はこぶね
『もしもしシスくん? 任務も良いけれど、ちゃんとお昼ごはんも食べた? ちゃんと二人とも休みは取るように!』
シエテの通信をきっかけに、シスとカオはカフェに入り込んでいた。ガヤガヤとした飲食店よりも、静かなこちらの方が良いと選び店の奥のテーブルへと足を運ぶ。ソワソワとカオはやはり落ち着かない様で、席に座るギリギリまでもシスの手を離さなかった。
「好きに頼め」
「それならシスといっしょのが良い、シスは何がすきなの? わたしも食べられる?」
「お、同じものだと……」
何でも構わないと思っていたシスは少し悩んで、ケーキを2つ店員に注文した。腹一杯に食って動けなくなるのも困るが、腹ペコも困る。それにこんな時に何を頼めば良く見えるものなのか見当がつかなかったので、大きなメニューの中からではなく、おすすめと表記されたペラペラの一枚から選んだのだった。
店員はシスの仮面を見て驚いていたものの、カオを見て「一人だと怪しいけれど彼女がいるようだし」と内心では落ち着かせていた。シエテの作戦は大成功である。
コト、コト、とふたつのケーキが運ばれてくると、カオは今までにないほどに目を輝かせた。イチゴを眺めてクリームを眺めて、食べる前から穴が空きそうなほどに見つめている。
「わたしケーキってはじめて!」
「そう、なのか……?」
「うれしい、シスと食べられることも、すごくすごくうれしい!」
ぱっと笑うカオにシスは優しく微笑むと、自分のケーキのイチゴをカオの皿へと移した。
「やる」
「わあありがとう! 宝石みたいなイチゴ、うれしい!」
カオはパクリとひとくち食べる度に、美味しい美味しいと顔を緩ませていた。そんなカオの様子にほっこりとしながら、シスは仮面を一回一回ずらしながら食べていた。カオにはそれが忙しそうに見えたのだろう、ケーキをひとくち分シスに伸ばした。
「食べるの、手伝おうか?」
「は」
「はい、どうぞ!」
ケーキをフォークで差し出し食べさせようとさせるカオ。こ、これではまるでアーンしてもらっているようじゃないかとシスは赤面した。良いのだろうか、当たりをチラチラと確認すると人も少なくこちらを気にしている者はいない。仮面をずらしながら差し出されたケーキをパクつくと、とても人に見せられないと恥ずかしくてたまらなくなった。
また食べさせようとされては身が持たないため、シスは残りのケーキが乗っている皿をカオの方へ動かした。
「全部やる」
「いいの? ふへへ、ありがとう」
こんなところを誰かに見られていたら恥ずかしくて生きていけないだろうとシスは腕組みをして悶々と考えた。
「いちゃついてますよシエテさん! さっきの見ましたか?」
「ウンウン、愛だね、良い感じだね。お兄さん嬉しくて泣いちゃいそうだよ」
一番見られたくないであろう人物に見られていたことをシスは知らない。
店を出ると、カオはここに来るまで繋いでいた手を思い出す。また繋ぎたいと思いつつも、店を出てから言い出せずにシスの後ろを歩いていた。数メートル歩いたところで、シスの足がピタリと止まる。カオも合わせてその場に止まり、どうしたのだろうと様子を伺った。
「……ほら」
差し伸べられた手にカオが手を重ねると、しっかりと握りしめてシスは歩き始めた。もう繋げないと思っていた手が冷たい、冷たい手だというのにカオの身体はポカポカした。