後日

じっと手を見る。カオを抱き締めた時の感触がまだ残っているのだ。擦り寄るカオの頭と、におい。

「抱き締められることと、抱き締めることはこんなにも違うものか」

カオはどこに居るのだろう。また、だ、抱き締めたい……とキョロキョロ辺りを見渡すが、こんな時に彼女は居ない。発情期のような浅ましい考えに唸りながらカオを求めて足を動かす。

「シス!」
「カオ」

パタパタと駆け寄って来るカオを見るとついすぐに手が出てしまいそうになる。少し上げた腕を降ろすと、誤魔化すように腕を組んだ。

「シス、ふふ。今日はオムライス食べに行く約束、ね」

ぱっと笑うとカオは触っても良いかいつものように尋ねて手を握った。このルールをカオは律儀に守っているが、自分が言うとなるとこんなに恥ずかしい質問は無い。

「ぁ……カオ、その……」
「なあに」
「ま、また、お前を……っ、だ、だ!」
「うん?」

ぺかぺかと眩しく見えるカオに言葉が出てこないシスは下唇を噛んだ。

「……またにする。出かけるぞ」
「うん、行く!」

今日は無理だと悟ったシスはグイグイとカオを引っ張って行った。

「シスはオムライスすき? わたし、前にシエテさんに食べさせてもらった! おいしかったからすき、ね、シス。シス?」

カオは一生懸命にシスに話しかけていた。その声はシスに届いているのかいないのか、返事は無い。シスはずっと抱き締めるチャンスは無いものかと考えているからだ。

「今日のシス、変なかんじ。でもシスとお出かけうれしい、ふへへ」
「あ、ああ」

へらりへらりとしているカオの方をやっと向けば、背後から荷を積んだ車が近寄って来ているのが見えた。咄嗟にシスはカオの肩を寄せて自分の方へ隠すように荷車から庇う。

「危ないぞ」
「あ、ありがとう」

抱き寄せられて赤くなったカオにも、自分が自然に抱き寄せていることにもシスは気がつかず再び歩き始める。

考えながらオムライスを食べたシスは味がよくわからなかったと言う。