カトル

「カオの欲しいもの……」

むむむ、とショーウィンドウを睨む。シスは首を捻って、また捻って、頭を抱える。店員は店の前に仮面をつけた不審者が居ると警戒していた。

「不審者かと思ったら、シスさんじゃないですか」

警報ブザーが鳴る前に現れたのはカトル。シスは不審者扱いしているカトルの方を向きムスリとした顔をしたが、仮面をしているために見せられない。

「こんな趣味があるんですか?」

カトルは店のかわいらしい服やアクセサリーを見ながら指を刺した。

「俺ではない。カオのものを探している」
「ふうん。で、何か決まったんですか」

これからだ! と意気込みを見せたものの、シスには何もアテがなかった。カオが何を欲しがっているかも知らない、好きなものもろくに知らない。

「良かったら、聞いて来てあげましょうか?」
「……な、ぐ……やむを得ん、か」

珍しく素直だとカトルは驚く。断ると思って冗談半分のような発言であったが、シスは自分を頼ろうとしている。面白い変化だ、いつからこの人はこんなにも女々しくなってしまったのか。カトルはそんな考えを巡らせながら、シスにカオを調べてくると約束したのだった。



「カオさんは欲しいものとかありますか」
「欲しいもの、ない」

シスさん調査終了です。カトルはやれやれ終わったなと思った。『でも』とカオが言葉を続けるまでは。

「シスにあげたいものならある。だから、シスにあげたいものが、わたしの欲しいもので……それは、だ、だめですか?」

カトルは目を見開き、ああそうだったと一人で納得して微笑んだ。

「いいえ、駄目ではありませんよ。あなたはそういう人でしたね」

カオはキョトンとしてしまった。どういうことなのだろうかと目をぱちぱちさせたが、カトルは笑うばかりで教えてはくれない。

答えにはならないだろうが、これがカオの欲しいものの答えなのだ。カトルはカオに御礼を言うと、肉たらしいほど愛されている男に伝えに行った。
……が、そのまま伝えるのは癪なのでシスにも『何か欲しいものはないのか』と問う。

「カオが欲しいと思うもの、それが俺の欲しいものだ」
「あーそうですか。……なんでしょうね、シスさんが言うとちっともかわいかないんですよね。カオさんには何あげても喜ぶと思いますよ。良かったですね」

カトルが冷たくあしらうと、シスは焦ったようにカオの欲しいものを尋ねてきた。絶対に教えてやるものかと、カトルは耳を塞ぐのであった。