ねんね

艇に辿り着いたのは早朝のことであった。

まだ連絡を入れていた団長と数名しか起きておらず、まだみんな寝ているよとまぶたを擦りながら団長は言った。辺りをチラチラと姿を確認するが、確かに居ない。誰を探しているかシエテには目敏くわかったようで、ウインクをされながら「起こしに行ってあげればいいよ」と笑われた。フンと素っ気なく返事をしたが、足は真っ直ぐにカオの部屋へと向かっていた。

ゆっくり扉をほんの少しだけ開けながら「入るぞ」と声をかける。返事は無い、まだ眠っているようだ。着替えなどをしていないことがわかると扉を大きく開け、中に入る。布団からわずかに見えるカオの顔を見ると、ホッと肩の力が抜けた。

ベッド近づき跪くようにして身体を屈ませると、カオの顔をよく見た。起きる様子は無い。ぷうぷうと寝息が聞こえる。無自覚に顔がゆるむと、気がつけばカオの頭を撫でていた。

「ん……」

ゆっくり開けられたまぶた。カオはぱち、と瞬きをして不思議そうに目の前の人物を見つめた。

「夢……? シス?」
「今、帰って来た」

布団が擦れる音がすると、もぞりとカオは両手を広げるように出した。

「おかえりなさい」
「ああ」

吸い込まれるようにカオの腕の中へと身体を寄せて抱き締められる。ふるえながらじわじわと自分もカオの背中へと手をまわしてみれば、愛おしそうにカオが顔を擦り寄せて来た。シスはカオの肩に鼻をくっつけて、目いっぱいカオの匂いを吸い込んだ。いいにおいだ、と落ち着いた後、どちらかともなく身体を離して顔を見合った。

「シス、これからおやすみ?」
「そうなる。夜通しだったのでな」
「ここで寝る? ふとん、あったかいよ?」

落ち着いていたシスに電撃が走る。カオはもぞもぞと端に寄り、どうぞと布団をオープンにしてここに来たらと誘っているのだ。カオはただ純粋に休んでいけば良いと思ったのかもしれないが、あまりにも無防備。布団がめくられて初めてわかるカオの寝巻きはワンピースのようで、惜しげもなくカオの足を曝け出していた。落ち着いていたシスの心臓はバッコンバッコンと大きく動揺して、これはカオの誠意なんだおかしいことを考えるなとシスは雑念を払った。

「いや、おれはいい、ね……ねむくは、ない……」
「でもつかれてるんでしょ、寒いのよくないよ」

あっためてあげるよとカオはへらりと微笑む。そうだこれは暖を取るだけなのだと自分に言い聞かせながら上着を脱ぐ。裸になるわけでもないのに、その脱ぐ動作も何故か今はいやらしい行為に感じられた。平常心を装いながらカオの布団に潜り込めば、全身をカオの匂いに包まれているように感じた。

「ヒャ!」
「なっ、どうした!俺は何も……!」

慌てて両手をカオに見せるように何もしていないと出す。痴漢を疑われた人物のように思わず無罪を訴えてしまった。

「シスの服、冷たいね。それでびっくりした」
「あ、ああそれだけか」

鎧部分が特に冷たかったようで、カオはそれに声を上げたのだ。仕方ないじゃないか、鎧服もしっかり脱げばそれはもうほとんど裸なのだから。下手に動けばカオのどこに身体が当たるかわからない、シスは神経を研ぎ澄ませて身体を動かさないように気を配った。

お腹が鳴るまでそんな緊張の時間は続き、ごはん食べる? というカオの一言にどれだけホッとしたことか。シスは布団から先に出ていくカオに後から追いかけると告げると、カオの背を目で追いながら自身の落ち着かなくなったソレをどうするか苦悩するのだった。