ハロウィン

「トリックオアトリート!」

カオに見つかるとすぐにそう声をかけられた。団長やシエテには警戒していたが、カオはノーマークであった。ハロウィンなんて祭りごと、カオは参加しないと思っていたからだ。

「俺はハロウィンをしない。これは団長にもシエテにも言っている。俺の仮面は仮装じゃないんだ」
「ハロウィンしないの? そ、そうなの……」

シュンとするカオに若干の焦りを感じたシスは、今年だけだぞ伝えて咳払いをした。

「トリックオア、トリート」

ハロウィンをしたがっていたはずのカオだが、パタパタとポケットのお菓子を探し慌てていた。

「どうした、やらないのか」
「えっと、その、もらいたくて……そればっかり考えて、わ、忘れた……」

肝心のものを忘れただと! シスはため息をひとつ、じゃあ悪戯かとカオに手を伸ばした。

「いたずらはだめ!」
「それだとハロウィンにならないだろう」
「だ、だって、ハロウィンのいたずらはキスすることなんだって、シエテ……言ってた」

シスは、あの馬鹿頭目! と心で叫んだ。

「ち、ち、ちがう! 悪戯は悪戯だ、そんな意味など無い! だだ、だから俺は決してお前にキ、く、キスだとか、しようと企んではいない!」
「ちがうの? じゃあシス、いたずらしていいよ!」

はい! と元気よく両手を上げるカオ。どこからでもかかってこいとするカオだが、悪戯は悪戯で困るものだ。シスはどうすればセクハラにならないか、いやらしくならないか、嫌われないか試行錯誤する。


結局のところ、シスがカオの鼻を摘んで悪戯は終わった。

否定しなければ、カオとキスできたかもしれない、俺はなんて馬鹿だとシスは頭をかかえてハロウィンの夜は過ぎていった。