グラン
「…………」
「黙ってちゃダメじゃない!」
団長、グランはパシンとシスの胸を叩いた。グウ、と唇を噛み締めてシスは俯く。
「シスが言ってきたことでしょ、仮面外すことに慣れたいって。熱でもあるのかと思ったけど、本気なんだよね?」
「そう……だが、その…………」
シスが夜の甲板でヌラリと現れた時は悲鳴をあげそうになった。静かにするように口を押さえられたグランは、少し付き合って欲しいと頭を下げられたのだった。
「無理しなくてもいいんじゃない? 仮面、返すよ」
渡された仮面を受け取るシスは、そのまま手に握りしめてコネコネと動かす。いつもならとんでもない速さで仮面を付けるというのに、どうしたのだとグランは息を吐く。隣に座り直すと、ボソボソとシスが口を開いた。
「カオが………」
「カオちゃんが?」
「カオと、コレをしていると…………」
「変だって?」
「ち、ちがっ…だ、仮面………その、できない………だろ」
何が、何を、ハテ? グランはフウムと考えた。シスはみるみるうちに赤くなってしまうし、顔を上げようとしない。
「キ、キスとか?」
あはは!と冗談混じりにグランは答えてみる。ますます赤くなって茹だっているシス。汗さえ目に見えた。
「………ッ!」
「え?! 当たりなの?!」
「い、言うな! アイツにも、他の奴にもだ!」
大きな声を出すとすぐにシスはまた俯く。はあはあと息があがって、とてつもなく恥ずかしいらしいことがわかった。
「じゃあさ、シスは目隠しして、カオちゃんからしてもらえば?」
「変態じゃないか……誤解を産むぞ、それは」
確かになーとグランは床にぐるぐると円を描いた。膝を抱えて小さくなったシスの耳がピコピコと動く。風が吹くと冷たいが、なんとなく、シスの方から熱量で温かい。
「俺からじゃないと。……うかうかしていれば、またカオが狙われてしまうだろう」
何かあったのかと聞きたいところだが、真剣に悩むシスに今は聞けなかった。それに、とシスは言葉を続けた。
「あれだけ人に見られたくないとする姿を、俺には見せてくれる。隠さなくても、アイツは平気になったんだ。俺も、ならねば……」
カオの耳ことだ。確かにカオは絶対に人前でフードや帽子を脱がない。脱げばパニックになるのだ。始めはシスにも見られることを嫌がっていたが、最近は克服したらしい。
「かわいいね、カオちゃん」
「なっ、なに」
「動揺しないで、かわいいでしょ」
返事が無い、というより、聞き取れない程小さな声でボソボソと何かをシスは言っている様子からして、かわいいとは思っているようだとグランはほくそ笑んだ。
「おはようくらい言えるようになると良いよね」
「努力しよう」