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「なんだマスクか」
大きな大きなため息をつくカオ。失礼な奴だとマスクはカオを見る。
「兄貴じゃなくて悪かったな」
「アームさんの応援に来たのにマスクしかいないんだもの」
カオはゴールドアームのファンである。それはもう「超」がつくほどに。
そして、カオはマスクとは犬猿の仲であった。理由はいろいろあるらしいが、とにかく仲が悪く、顔を合わせれば喧嘩をしていた。
「マスクまだ必殺技できないの?」
「うるせえ!関係ねえだろ!」
「関係ある!アームさんの弟のくせに必殺技くらい持ってて欲しいわ!」
取っ組み合いになりそうな勢いで喧嘩をする二人に、ゴールドフットもやれやれという様子である。
強制引退後、三兄弟は緊急メンテを受けていた。
二人に比べて早くメンテを終えたマスクの目にうつったのは信じられない光景である。
カオはマスクの前で泣いたのだ。
「なんで泣いてんだよ」
「わかんない」
「わからねえのに泣くのか」
「そうよ」
グズっと鼻をすするカオ。泣いているところは見たことがなかったし、それも、どうして自分の前で泣いているのかマスクは困惑した。
「マスクの顔見たら涙が出たの」
「俺の顔?」
自分の服をくしゃくしゃに握りしめて、これ以上泣くまいとするカオ。マスクはますますわからなかった。
「悔しいけど、安心したのかも」
マスクは悪い顔をして笑ってみせた。
「それじゃ俺のことを好きみてえじゃねえか」
からかってやったつもりでマスクは言った。どうだ反抗してきなといつものように構えていると、カオは目を泳がせる。
「好きかも」
ポツリ、と予想していなかった答えに、マスクは言葉が出ない。カオの顔は赤くなり、目をそらせる。なんだそんな様子だと本気みたいじゃないかとマスクは思った。
「マスク、元気になってよかった」
「おう」
「また試合、出てきてね」
それだけ言うと、カオはスタコラとメンテルームを退室した。
残されたマスクはこれから先どうやってカオを顔を合わせれば良いものかと考える時間が始まったのだ。