バカンス

「ここに行こう!」と団長が広げた紙にはリゾートの文字があった。みんなで泳ぎに、遊びに行こうと目を輝かせている団長と盛り上がる仲間たち。

この地は年中暖かく、海も綺麗。
皆、砂浜だ飯だとお祭りのように騒いでいた。


「良い天気だねえー海水浴日和、他所じゃコートを着込んでいるっていうのにねえー」

シエテはブーメランパンツの水着を着て太陽を見上げた。太陽も水着も、目のやり場に困るとはこのこと。

「どうして俺まで」

シエテに答えるのは、普段通りの格好をして腕を組むシス。引っ張り連れて来られたシスは、引っ張って来た本人のシエテを一睨み。まあまあとなだめるシエテ。

「シエテー!はやくー!」
「団長ちゃんすぐ行くよー!」

なだめることもそこそこに、シエテは団長の方へと走って行ってしまった。こんな所に来てもやることなどない、くだらないと呟きながらシスは浜に座り込んだ。

そこにザ、ザ、と砂を踏む音が近づいて来た。シスは振り向かなくとも、この音の正体がわかる。

「シスは泳ぎに行かない……?」
「フン……行くわけがな……ひあっ?!」

カオということはわかっていた。が、振り向いて見れば普段のカオの姿ではなく、水着姿のカオであった。

「な、な」
「シエテさんに、買ってもらっちゃった。そこのお店で……あんまり、種類が無くて、ぱつぱつ……なって」

いつものエルーン用の帽子を被り、上着を羽織ってはいるが水着はしっかり見えている。上から下までチラチラと見ただけでシスは顔を逸らした。

「フ、フン。泳ぐなら行くが良い」
「シスがここにいるなら、わたしもここにいる」
「な、なにっ」

カオはシスの隣に座り込むと膝を抱えた。

(今のカオといるのはまずい、なんなんだこの水着は。シエテめ、止めはしなかったのか? 肌が見えすぎている……俺だけじゃないんだぞ、他の奴らもカオの無防備な姿を見てしまうじゃないか)

と、もんもんしながらシスは考えていた。殺気を放っているシスが隣に居ては、誰もカオに近づくことはできないので要らぬ心配なのだが。

「み、水着、はじめて、なの……どうかな」
「へ? あ、ああ、その、その……」

もにょもにょとシスは似合っていると呟いたが、カオには聴こえていないようで、カオは首を傾げて笑っている。

そんな間にも、シスはどうして谷間に目がいってしまうのだろうと考え目線を下に動かし、下にすれば太ももに目がいってしまう自分を情けなく思っていた。欲まみれ、まったく、情けない。

「貝殻、拾っちゃうね。どうして集めちゃうのか不思議ね」

砂を触り、貝殻を探すカオ。そんな時にびゅうっと向かい風が襲った。つばの広いカオの帽子はいとも簡単に吹き飛ばされ、鴎のように空を舞った。

「わ、わ、わ! や! シス隠して!」
「は? ぎゃあい!」

慌てたカオが人の目から隠れるためにシスを盾にしたものだから、水着でくっつかれてしまうシス。そんな布面積で張り付くなとシスは真っ赤になって引き剥がそうとするが、カオもこんな時ばかりは馬鹿力で離れない。

「見られちゃう! 見られちゃうったら!」
「ば、やめっ! 今はするな、するなー!」

なんだか楽しいことになっていると遠巻きにシエテは眺めていたが、助け舟は出さない。存分にイチャイチャして欲しいと、捕まえた帽子を隠しながらシエテはニヤけるのだった。