接吻

バカンスの夜。


パイナップルのジュースや、お酒や、数多くのご馳走。どんちゃか騒ぎをした後の夜は静かで、あれだけ暖かった昼間とは違い少し冷えるくらいだった。

波の音が聞こえる。

「カオ」

夜だというのに帽子を被っているカオだから、すぐに見つけることができた。何をしているのかと浜の近くにいたカオに尋ねれば、月を見ているのだと言う。海に照らす月が道のようで、真っ黒い夜の海は怖いと話した。

「シスと海に来られてよかった」
「そうか」
「シスだいすき」
「……っ」

唐突に好きとか言うな、とシスは頬を染める。まったく羞恥心があるのは自分ばかり、カオは羞恥を持ち合わせていないのだろうかとすら思うことがある。

「月の道、渡れそう」
「な、やめ!」

海に光る月の光道を渡ろうと、カオは二歩三歩と海に入った。冬の海だ、こんな所でも夜は冷たい海水である。すぐに冷たいと叫びながら飛び出して来たカオを、シスは受け止めた。

「馬鹿なことをするな……」
「うん。もうしない、ふふ」

シスの腕の中でカオは笑っていた。おかしいことなんて無いのに、シスは心配しているのに、どうしてか今が嬉しくて笑みがあふれる。しっかりとシスに体を任せて、シスは反対にカオをしっかりと抱き支えた。

「ねえシス」
「うん」
「ずっと月のままだったら」
「うん」
「ずっとこうしていられる」
「ああ、そうだ」
「それなら太陽があがらなくてもいいね」

なんとなく顔を上げれば、風が吹いて来たかのようにフワリとシスが口付けてきた。カオが恥ずかしくなって顔を伏せると、グッとシスの腕の力が強くなった。

「カオ、好きだ」
「ん、」

顔を擦り寄せればシスが後頭部を撫でてくれる。寒くなっちゃったと言えば、部屋に戻ろうと腕を離された。月明かりではっきりとは見えなかったが、シスの顔も赤いのだとカオは安心する。別々の部屋に戻り、キスしてしまったなーと同じことを悶々と考えていたなんてお互いに知らないだろう。