ユーステス


雪をあまり見たことがなかった。ちらちらと降るだけで積もりはしないだろうと話している声を耳にしながら、取り憑かれたように雪を目で追いかけていた。


「ここには慣れたのか」

その声に振り向くと、ユーステスが立っていた。

「なれました。でも、時々名前のわからない人が出てきます」
「これから覚えていけば良い」

カオが頷くと、ユーステスはカオの手を取り、自身の手で包み込んで温めて始めた。

「俺の……兄弟と同じことをする」
「同じこと?」
「寒い中、手袋もつけずに過ごしていた。いつも忘れて俺が届ける。氷のような手になりながら遊んでいた」

それはきっとわざと忘れていたんだ、とカオは考えた。だってこんなに優しくしてもらえるなら、いくらでもとぼけてしまう。

「わたしもユーステスさんの妹なら、同じことを何度もします」
「困った妹だ」

ふへへと笑うと、ユーステスの顔も少しやわらかくなった。自分にももし兄弟が居たら、話すことのできる兄弟が居たら、それはこんな気持ちなのかもしれない。カオの心は体温よりもポカポカした。