カトル

冬のある日。

「シエテさん、行けなくなったの?」
「ごめんねー! どー…しても抜けられなくてさ」

カトルが見かけたのは、シエテがカオに両手を合わせて謝っている場面。

「どうしました」
「カオちゃんと買い物に行く約束してたんだけどさ、俺行けなくなっちゃってね」

フウンとシエテを見て、カオを見た。カオは両手の指を合わせて不安げに、どうして良いかわからずにいる。カトルはややあって、白い息を吐いた。

「ぼくが行きましょうか」

その一言に、今日の日は始まったのである。




ガヤガヤと大人や子どもが聞き取れはしないが、騒がしく賑やかにしている。

「え、シスさんにクリスマスプレゼントを」
「そう、シエテさんいっしょにえらんでくれるって、約束してた」

なんだそんな買い物の用事なのかとカトルは舌を鳴らした。引き受けたのは自分だが、他の男のプレゼントを選ぶ程つまらないことはない。当人のシスは今頃、艇で稽古をつけているに違いない、知るよしもないそのことがまた腹がたった。

「ぼくはあの人の趣味を知りませんからね。役に立てるかどうかわかりませんが、頑張ります」
「あ、ありがとう」

最初に見たものは衣服だった。しかし内心カトルは、衣服だなんてもの与えたら絶対着用して目に入ってしまうじゃないかとムカついたため、カオが選ぶもの全てを却下した。もっとこっそり使えるくらいのものにしてくれと喉元から出そうになりながら、カトルはNOとするのだった。

「カ、カトルさんは……どんなものをもらったら、嬉しい?」
「ぼくですか? そうですね、暗器……いや、殺傷術の本……うーん、生き物は管理が難しいですから毒性の強い菌類や葉……」

パチクリしているカオにカトルは冗談ですと誤魔化し笑う。

「ぼくはプレゼントなんて、本当は要らないんです。物を増やすことも要らない。それよりも星屑の街の子どもたちにプレゼントがあれば、それが嬉しい」
「いっしょ」
「ええ、フフ……前にカオさんが言っていた、シスさんが欲しいものが自分の欲しいものだと言っていたように」

カトルはその時、無意識ながらも優しい顔だった。カオはその顔を目に焼き付けていただけなのだが、カトルにはカオがポカンとしていたように見えたために少しだけ慌てた。

「すみません、参考にならなくて」
「ううん、そんなことない。カトルさんは優しいね、きっとカトルさんに好きになってもらえた人は、幸せ」

へらりと笑ったカオに、カトルはそうであれば良いと胸が苦しくなってしまった。

「ぼくは片想いですから」
「えっ」

苦笑いをして、カトルは苦しさを誤魔化す。物を増やし持つことも、人を好きになることも弱さや鈍さになってしまうのだと言い聞かせて。

カオは誰が好きな人なのか、片想いで良いのか、聞きたいことがたくさんあった。しかし聞く前に動きはじめたのはカトルで、それで何となく、聞かない方が良いのだと思った。

「行きましょう。マグカップはどうです? シスさん専用は艇になかったはずですし、もしあったとしても、ぼくが割ってやりますよ」

カトルは冗談混じりのように話したが、本気だった。シスが使っているものがあれば割ってやろうと本気で、後で調べてやるつもりなのだ。



「今日はありがとうございました」
「いえ。用心棒にならいつだって頼んでください」

すると、カオがおずおずとカトルに袋を差し出す。

「カトルさんにもクリスマスプレゼント、あの、あまり高いものではなくて、ごめんなさい」

袋には万年筆が入っていた。邪魔にならず、普段使えるものを選んだと言う。

「これならシスさんにバレずに使えそうです。あの人、案外ヤキモチ妬きですからね」
「そう、なの…?」

ええ、と笑いながらカトルはペンをポケットにしまう。これを今度、堂々とシスの前で使ってやろうと思いながら。何も知らない彼は、きっと目にも止めないだろうが、使って、使って、見せびらかしてやるのだ。

それがなにより、自分へのプレゼントになる。
そんなことは彼女には内緒だ。