フェディエル
「おお! この二人も番かや?」
突然押し掛けてきたフェディエルは、ズカズカと食事中のシスとカオに声をかけてきた。グランが慌てて誰にでも声をかけちゃダメだと追いかけて来る。
「なんだ突然」
「ご、ごめん……人の番をもっと見たいって艇中を歩いてまわってるんだ」
事がわからずシスはグランを睨みつけるが、グランにもフェディエルが抑えられないらしい。疲れきった顔でコソコソとグランはシスに耳打ちする。
(助けてよ、シス……カオちゃんと番ってことを見せてあげてくれない?)
(な?! つ、番だと……)
(他の人の でぇと も見たいらしんだ)
ということで、巻き添えになったシスはカオとの『でぇと』を見せる任務に就くことになった。
「シエテは来なくてもよかったんじゃない?」
「いやいやこれは任務だから。それにシスくんが心配だからさ〜」
「番が眺められるなら何でもいいぞよ!」
離れたところから見守る一同。どうしてこんなことにと怒るシス。よくわかっていないカオ。
「団長もシエテもあのよくわからない女も、ク…」
「シス、嫌なら……やめる?」
不安そうにするカオに首を横に振る。カオと居ることが嫌なのではない、あの面白がっている奴らが嫌なのだ。
「カオ、付き合わせてすまない」
「ううん。任務でも、何でも、シスといるの嬉しい」
フヘ、と恥じらい笑うカオにシスはまた照れ臭くなる。どこに行くか今回は指定があり、二人で飲食店に行って欲しいらしい。シスはもちろん飲食をしろだとと怒ったが、前のグランとルリアの別バージョンでぇとが見たいと言うのだ。
「あーんというやつで魅了をかけてみて欲しいぞよ!」
「誰がそんなこと!」
「前にシスくんされてたじゃん」
「う、うるさい!」
入り口でにぎやかにする一同。離れて座れとシスが指定すると、しぶしぶフェディエルたちは離れた席に着席するのだった。
シスもカオも普通に食事を終え、つまらないとフェディエルが文句を言った。そうは言っても人が見てるとわかっている中でイチャイチャしろとは難しい要求である。
「あっ」
そんな帰り道にカオが転んだ。靴の留め具が壊れてしまったようで、足も擦りむいてしまった。
「大丈夫カオちゃん」
「シエテさん、大丈夫、ありがとう」
シエテが心配している横から屈み込むシス。カオに背を向けて、どうしたのと聞く前にシスは口を開いた。
「おぶされ。その靴では歩けないだろう」
「で、でも」
「早くしろ。通行の邪魔だ」
頷くとカオはシスの背中に身を任せた。おんぶされるのは初めてで、カオは恥ずかしくも、少し嬉しい。
「シス、ありがとう」
「フン」
「おお! 番らしいぞよ!」
「うるさい」
フェディエルはその日、満足げに島に帰って行ったという。