想像図

「カオー! 好きじゃー!」
「え、わたしも好き」

飛び込んで来てすぐの第一声、それに答えるカオ。答えが返ってくるとは思っていなかったランページはピタリと止まって沈黙する。

「なんじゃ、恥ずかしい奴じゃのおー……」
「ランページさんの方が先に言って来たんじゃない!」
「そ! それはそうじゃが、面と向かって言われると、わかるじゃろう! なあ!」

カオの側にどかりと座ると、ランページはここへ来いと膝を叩いた。カオが足の上に座ると、酷く優しくか弱い手つきでランページはカオの背中に指をやるのだった。

「もうすぐあれじゃ、ばれんたいん……と言うたか、どうじゃその、楽しみにしとるけえのう」
「あげるとは言っていませんが」
「な! な! 嘘じゃろ、もしかして他に……エイか!? ネズミか!? なんなら、ゴリラか!?」

カオはフフと笑って、ちゃんとあげますよと話しかけながらランページの足を撫でた。

「ランページさんのお返しも楽しみに……」
「なあカオ、その“ランページさん”なんじゃが…」
「はい?」
「エイヒレのやつは、呼び捨てにしちょるじゃろ。どー…してワシはさんなんじゃ」

なあ、なあ、と問い詰めてくるランページから目を逸らし、カオは少し赤くなった。

「いいじゃない、べつに、さん付けでも」
「ワシもそれでもえいと思うちょる。なんちゅうか、初々しい感じがして好きじゃ。でも理由を教えちょくれや」

カオは自分の頬を隠しながら(なんじゃそのかいらしいポーズは)モジモジ。

「デプスチャージはお父さんみたいだから、良いけど、ランページさん呼び捨てたら、なんだか、旦那さんみたいなんだもん」
「ほう、ほう」

それからランページは黙ってしまって、聞いておいて黙るとはなんだとカオはポカポカとランページを叩いた。まったく痛くはないのだが、スパークはギチギチと締め付けられている。

もう少しさん付けでも良いと思う、自分もまだ、そう呼ばれるには耐えられそうにない。