しどろもどろ

カオが風邪をひいたらしい。
それを知ったのは、デートの約束の時間になってもやって来ないカオを待っていた時。憎いエイヒレトンボが一応伝言だと話して、初めて知ることになった。

どこで休んでいるんだと聞けば、サイバトロン基地。それはそう。風邪というものは万病の元とも言うらしいとクモが笑って話していた。ついにあの雌も終わりッスねとケラケラ笑うものだから、足をむしり取ってやった。

一日待っても、カオは現れない。なんだなんだ、風邪というものはすぐには治らないものなのか。今頃カオが助けを求めてうなされているかもしれない、助けてランページとうわ言を言っているかもしれない(それは少し見たい)。

夜中、サイバトロン基地へコソコソと向かうことにした。ザル警備であれと願っていたところ、偶然にもメガトロンが仕掛けてくれたおかげもあり、スルスルと潜り込むことができた。

カオの寝ている部屋はすぐにわかった。なぜか? それは愛の力! …というのは冗談で、たまたま出口に近い所がカオの寝ている部屋だったのだ。

「カオ、カオ」
「カニに似た死神が見える……」
「誰が死神じゃい! ワシじゃ、ランページじゃ」
「ランページ…?」

熱にうなされながら、ぽうっとした顔と、とろんとした瞳で(これがけっこうくるものがある)カオはランページを見た。夢でも見ているのかとゆっくりと瞬きをすると、カオはランページの差し出された指を触った。

「どうしたの」
「どうもこうもないわい、カオが風邪じゃと聞いて、見舞いに来たんじゃけえ」
「あ」
「あ?」
「ありがと」

指に頬擦りされて、少しスパークが跳ねた。なんじゃい甘えちょる、かわいい。

「ランページ、いつまでいられる…?」
「(呼び捨て!)いつまでも居てやるけえの」
「そっか、よかった」

スウっと眠りに入るカオをじっと見て、死んだんじゃないだろうかと不安になり息を確かめる。よかった生きている。

「頑張れよ、病に打ち勝つんじゃカオ」

しばらくその場で寝顔を見守り、指を離す。こんなに弱っているカオを置いて帰ることもできず、しかしサイバトロンに居座ることもできず、さてどうしたものか。