旨味
「んん」
「おお! 目ぇ、覚めたか」
赤ん坊のように抱きかかえられていたカオは目を覚ます。ゴツゴツカツカツとしたボディに、カオは青アザができそうだ。しかしながら抱き抱えられていることは嬉しく、頭を擦り寄せてみる。
「な、カオ……甘えちょるんか?」
「うん」
そうだった! 甘えられているとわかると、何も言えなくなる。カオはそのまま身体を傾けて、ランページの方へと向きを直す。風邪の治りたての身体がまだ少し重たい。
「どうじゃもう平気か?」
「もう平気。ありがとう」
「どうなるか心配じゃったけえの」
「ずっとついていてくれたの?」
「当たり前じゃ」
「う、だいすき……」
だ……とだけ声に出しながら固まって、ランページはバクバク。
「ランページさん、もう少しこのままでも良い?」
「いくらでもおったらええ。カオを落としはせん、もうちいと休め」
「うん」
お腹をトントン、トントンとリズム良く叩かれてあやされている様。こくりこくりと眠さと戦いながらランページ の声を聞く。「痛うはないか」「何か欲しいもん、言うてみい」それにうんと返事をして聞いているということを合図する。
「すき」
「ああ」
「ずっとそばにいてね」
「ああ」
カオが眠りに入ると、ランページは静かになった。寝るということは、自分にはわからない。回復するには必要なことなのだろうが、寝ている姿は死んでいるようにも見える。ランページには時々心の臓が動いているかを確かめて、生きていることに安堵することを繰り返す時間。潰してしまいそうになるほど柔な身体をなるだけ優しく支えて、愛しく思った。