努力家

「シス! あのね!」

カオ扉を開けてシスの部屋に入ると、シスは「あっ」と情け無い声を出した。シスは仮面を外していたからだ。自分の部屋

「あ、ごめん……」

シスの私情を考え、カオはゆっくり部屋の扉を閉め始める。そこにシスが慌てた様子で閉まりかけたドアを押さえに来た。

「い……いい、………入れよ」

その顔はどこを向くでも無く、カオの顔を見ていた。真面目な話をする時は顔をしっかり見てくれるシスだが、あまり普段、仮面無しで顔を向けることはしない。しかしながらその顔は赤面して、今にも逃げ出してしまいそうである。カオはシスの腕の下を潜り部屋の中へ入ると、本当に大丈夫かと心配の眼差しを向ける。

「シス、あの……仮面」

カオは机に置いてあった仮面を渡しに行くと、シスは手で待ったをかけた。

「だ、大丈夫……だ、か、かまわな……い」
「そう……?」

カオは仮面を降ろす。シスのおかしな様子を不思議に思いながら腰を降ろすと、カオの隣にシスも座った。


シスには考えがあった。


(カオと向き合うには、仮面をしているままでは駄目だ。これはチャンスなんだ、カオと素顔で向き合い、いずれは、好きな時にカオと……)

一度はキスをしたものの、シスはカオとそうやってイチャイチャすることを諦めていなかったのだ。仮面がないことが普通になれば、改まって緊張することも無く、きっと自然にできるものと考えているのだ。

「シス、無理はしないで」
「フ、フン……俺は無理など、し……」

ぎゅ。カオが手を握り顔を覗く。シスの言葉は引っ込んでしまった。

やはり仮面をつけて話そうと意思が揺らいだ。静かに仮面に手を伸ばそうかと指を動かすものの、カオを見ると手が動かなくなる。カオは耳を隠さない。信頼して、安心して、自分なら大丈夫だと思って。

「あ! わかった」

俯くと、そのままカオはトンとシスの胸に頭を預ける。

「ど、な、」
「こうすればシスは顔を見られないし、わたしは、シスを見られる」

ね? とカオのゆったりした声がする。トクトクトクと速い鼓動、こんなの、仮面をしていても話せやしないじゃないか。

「シスとなら、わたしも大丈夫。だから、ゆっくりしよ」
「……うん」
「わたし、シスと」

カオの言葉は、下へ下へと吸い込まれていった。カオがなにを言ったのかわからなかったが、聞き返すのはなんだか野暮な気がして。

眠たくなったとカオは身体をシーツへと倒す。少し赤いカオの顔に、カオも同じことを考えているのかもしれないと期待してしまった。

もっと頑張るよと後ろ頭を掻くと、カオが足で腰掛けていた尻をつつかれた。ふふふと笑い声がする、背中に目があればなあ。