クルミ
「今日も言えませんでした」
ハア、とマクワはイシヘンジンのボディチェックをしながらぼやく。これはもはや日常になっていた。
「ぐわぐわん?」
イシヘンジンはマクワのしょげた顔を見て不思議そうな声を出す。主人の珍しくショゲショゲとした顔に自分までも声がふるえていた。やおらイシヘンジンの足に額を当てて、マクワは口を開き始める。
「カオさんに自分の気持ちを。本人を前にするとまるで自分が自分ではないような、ハア……」
「ぐわわ、ぐわーん」
なぐさめるように上半身を動かしているイシヘンジンだが、主人の頭をなでられない。もどかしさからおかしな声を出し続けていると、マクワは「すみません、つい弱気になって」と苦笑い。責めているつもりではないイシヘンジンはまたぐわーんと大きく鳴いた。
『最近買ったものばかり食べているんだって!』とメロンからのメッセージに頭を掻き、卵焼きおにぎりを食べる。優しい卵焼きに白米が合う、不思議なおにぎり。明日はお弁当を頼んである。同じものを頼めばおかしいと思われるかもしれないことと、お弁当も大好きだからということから交互に頼み続けているのだ。
「今日もありがとうございます」
お弁当を受け取る、次の日。しろいきりの中で、まるで世界に今2人だけのような感覚になりながら笑う。
「明日は2つお願いできますか」
「だ、誰かと食べられるんですか?」
「いえその、明日はチャレンジャーの予約がいつもより多く入っているので、夕飯分……というか」
たははと笑いながらそう言うと、不安そうな顔から一変しカオはパッと表情が明るくなった。
「よかった」
よかった、とはどういう。聞き返すと、気にしないでくださいとカオは手をパタパタと動かした。
「明日は試合、頑張ってくださいね!」
「ええ、もちろん」
しろいきりが消え切る前にとカオは去っていった。