愛好

スタジアムの歓声!
盛り上がる場内にファンの声が響く。いつものごとく、声の方にファンサービスとして余裕の表情とジェスチャーを飛ばすマクワ。

そのサービスを飛ばした先には見間違いか、カオが居た。見間違いだろうか、いや。

(カオさん……?)

途端に負けられないと闘志がメラメラと湧き上がったマクワはチャレンジャーの男の子に圧倒的な勝利をする。

その日にはもうカオに会うことはなく、話すことができたのは次の日だった。また弁当を配達してくれたその時に「昨日の試合、見ていましたか」と尋ねる。

「実は昨日、仕事が半日だったので。そのまま……えへへ」
「そうだったんですか。言ってくだされば良かったのに」
「い、いえ。見ると言っても、好きだなんて言えませんし……」
「あはは」

ぽく、ぽく、ぽく、マクワはしばらく考えて、言葉を理解する。

「ええ!? す、ス!?」
「そうなんです、実は」
「ぼ、ぼくも、じつは」
「やっぱり良いですよね、セキタンザン!」
「えっ」

嬉しそうな顔で話すカオ。セキタンザンの話題を出され、マクワは目が点。何の話だろう、落ち着いて話を聞こうと告白の言葉を飲み込む。

「実はわたし、大きなポケモンが好きで……小さい頃からずっと。でも女が巨大なポケモンを持つこと、なんだか変な目で見られてしまって……」
「そ、それでぼくの試合を……」
「そうなんです! セキタンザンやイシヘンジン、とっても大きくて大好き!」

自分のことではなかった……と少し落胆する。しかし彼女のことをひとつ知ることができて少し嬉しい。大きなポケモンが好きだとは知らなかった。

「よかったら、近くで見てみますか」
「ほ! 本当ですか!」

イシヘンジンを出して見せれば、カオはとても喜んで跳ねていた。

「ひゃ! ひゃ! かわいい、大好き!」
「ぐわわわ」

とても、とても喜んで、イシヘンジンに抱き着いて(ちょっとずるいんじゃないですかね)。

「ぼくは、良いと思いますよ」
「え」
「女性が大きなポケモンを好きでも」
「そうでしょうか」
「それこそ、ぼくが望むもの。いわタイプのイメージを変えられたら、きっと」

少しだけこの時、カオに特別眩しくマクワが見えたことを、マクワ本人は知らない。