登り

「はあ、はあ……」
「大丈夫ですか」

マクワが差し伸べた手にカオは手を重ねる。ここが舞踏会なのであれば、とてもロマンチックなシーンだったであろう。しかしここは岩がゴロゴロとしている岩場。山、山なのだ。

それは先日のこと。

「ギガイアスが居るんですか!?」
「ええ。前々から調査に行きたいと思っていたんです。一緒に……行ってみませんか?」

野生ギガイアスを求めて山登り。それぞれ体長の個体差があるポケモン、大きな個体のギガイアスはそれはそれは見応えがあるそうだ。

「わたし、今日を楽しみにしていたんです。ぜったい、ぜったいに野生の大きなギガイアスを見ます」
「ぼくも楽しみにしていました」

楽しみにしていたのは、あなたに会うことですけど。

「はあ、はあ……」
「少し休みましょう。この辺でお昼にしませんか」

少し平らになったところに踏み入ると、マクワはにこり、そう提案した。服が汚れないようにとシートを広げてくれるマクワに頭を下げると、カオは足を抱えて座った。

お弁当をつまみながら、カオがぽろりと昔話をした。幼い頃、迷子になった時のことを。その時に野生のイワークが助けてくれたこと、それから大きなポケモンが好きになったことを順々に話した。

「初めてのポケモンはイワークが良いって泣いちゃいました。暮らせないので、止められて……」
「ふふ」
「わ、笑わないでくださいよ」
「すみません、あまりに嬉しそうに話すので。かわいらしいな、と」

ぽっぽっとカオは照れて頬を染めた。無意識に恥ずかしいようなことを言うなこの人はとカオは思った。マクワ本人は「口が滑って本音が出てしまった口説いているようじゃないか」といつものことですというような微笑みの裏でかなり焦りを覚えていた。

「い、行きましょう。きっとすぐにギガイアスに会えますよ」


その日、ギガイアスは現れなかった。
雲行きも怪しく、山を降りることになる。

また行きましょうと約束をして、また少しドキドキした。