隠しごと
マクワさんだ。
そう目に入ったのは店に並ぶ雑誌。手に取って中身をパラパラとめくれば、ジムリーダーのインタビュー記事が載っていた。
あ、買おう。購入の決意は弾指の間。ウキウキと足を弾ませて、家に着くなり本を広げる。すぐにマクワのインタビューを目を通していると、ゴンベが背中を触りおやつの催促をしてきた。少し待ってねと頭を撫でると、ブーとかプーとか声を出して訴えている。そんなゴンベを背に、インタビューに集中する。
『最近のマクワさんは負けなしという感じですね』
─ありがとうございます。
『こうしてゆっくりインタビューができることも、この連戦のおかげですね! 何か勝利の秘訣でも?』
─秘訣……ですか。日々の鍛錬と、ポケモンたちのおかげです。それと、負けた姿を見せたくなくて。
『それはやはりメロンさんにですか?」
─母さんは関係ないです!
『チャレンジャー泣かせになりつつあるジム、手を抜いてくれなんて声もありますが』
─ただ勝つだけです。ぼくは真剣にチャレンジャーに向き合います。
勝ち続けていると騒がれているマクワの記事、すごいなあと顔を緩めてしまう。しびれを切らしたゴンベが手を甘噛みしてくるので、おやつを引き出しから出すとすぐに飛びついて来た。
マクワの記事は取り下ろしの写真が載っている。閃いたカオは丁寧に写真を切り取って、トレーナーカードを入れているパスケースに挟み込んだ。こっそり仕事の休憩中にも見ようとにんまり。
そんなことから数日。カオは青くなっていた。
パスケースを無くしてしまったのだ、どこかに落としたらしい。キルクスタウンのあちこちを探す。あの中身を見られるわけにも話すわけにもいかないと、ひとりで探していた。
「何してるんですか?」
「マクワさん!」
そんな時に限って一番パスケースを見られたくない人物の登場である。
「探しものを、ちょっと……」
「一緒に探しましょう」
「だだだだだ大丈夫ですよマクワさん忙しいのに!」
「二人で探した方が見つかりますよ」
親切で協力してくれるというマクワに冷や汗をかき、怪しまれてもいけないかと頷いた。ただパスケースを無くしたことを伝えて、中を見られなければ大丈夫と願う。
「ごんごん!」
「あ、またゴンベったら」
ゴンベはバッグからハンカチを引っ張り出し、はむはむと口にしている。その様子を見ていたマクワは少し考えた後、カオの手を触った。
「もしかするとカオさん、匂いのするクリームをつけてます?」
「え! は、はい」
「きっとゴンベは匂いで食べ物と勘違いしてしまうんですよ。……そうだ、それで探せるかも」
マクワの考えは的中で、ゴンベにこの匂いを探してとクリームを嗅がせてみればすぐにパスケースを見つけることができた。
「よかったですね見つかって」
にこりと笑うマクワ。
「よかったです、これがないとわたし……困りますから」
「ごんごん!」
「あ!」
またゴンベがパスケースをパクリ。慌てて取り返そうとパスケースを引っ張ると、手からすっぽ抜けてパスケースは中身でぜんぶぶちまけて地面に落ちた。
「ゴンベは本当にその匂いが好き……みたい、です、ね?」
笑いながら散らばった中身を拾い集めようとしてくれたマクワはトレーナーカードや映画の半券と一緒に地面に落ちていた自分の切り抜きに手が止まる。
「キャー!!!」と叫び声をあげて、カオはマクワからパスケースと中身を奪い取った。
「それぼく」
「ななななんのことですか!」
「写真が」
「いやですねトレーナーカードの写真わたし写りが悪くって! 撮り直さなきゃ!」
「カードではなく」
「この映画のよかったですよね! 思い出として残してて、あはは!」
あははと誤魔化し笑い、穴があったら入りたいと泣きそうになる。見られたことをどうにかなかったことにできないだろうか、カオは思考がぐるぐる。
「わ、笑って良いですよ……」
「ぼくも!」
「……?」
「ぼくもカオさんの写真、持っていて良いですか!」
なにそれどうしてと思いながら、好きにして良いですよとカオは首を傾げた。
もしかすると変なことをしていた自分を誤魔化してくれるためにそんなことを言ってくれたのかと、カオの冷や汗はおさまった。