『かわいい』
かわいい。
なにが。
マクワさんが。
「かわいい」
口に出てしまった言葉にハッと口元を押さえる。そう言われたマクワはムッとして、まさか自分に言ったんじゃないでしょうねと目で訴えた。
「だってマクワさん、髪のセットしないとそんなふうになるんだって思ったらつい本音が」
「失礼ですね。ワックスを使わないとぼくはこうなんです。それよりも……こんな姿見せていることに喜んで欲しいところですね」
それはそうだとカオは膝を抱えて小さくなる。なぜマクワがワックスもつけずにリラックスしているのか、それはここがマクワの城、自宅だからである。
「本当は噂に聞くパンケーキやアイスを食べに行きたい。ジムリーダー、やめてしまおうか……」
苦笑いしながらマクワはカオの隣に座った。外に出ればきっとすぐに見つかって騒ぎになる。この部屋を見る限りでも、マクワのファンは星の数いるようだ。それもこわい(一度噂を掻き立てられたが、うまくマクワが誤魔化したようである)。
「わ、わたしはここで十分楽しいです。それに、ジムの時のマクワさん、かっこいいです」
「……あなたはまた自覚無くぼくを口説いて」
ジトリとこちらを見ながら、少し照れているのかマクワの顔は赤かった。カオはそれならと膝を抱える手を強めながら言い返す。
「マクワさんだって同じく、く、口説いていたじゃないですか。かわ、かわいいとか言って」
「あれは無自覚じゃない」
「えっ、あ。……そう」
弱々しくなったカオをクツクツと笑う。カオはこの人はバトルでも口でも強いなどと考えて恥ずかしくなった。そんなことも気にせず、前髪を触りながらマクワはテレビをつける。映画でも見ようと言って、画面を見せて来た。作品を配信してくれているサービス様々である。
「マクワさんのツボツボが、ゴンベのお世話してくれているおかげですね」
ゆっくりできるのは。
「きのみジュースをたくさん作らせておきましたから」
今日のために。
ツボツボ大丈夫かなと、二匹を想像する。きっと大丈夫、マクワさんのポケモンだからとポツリ話すと、マクワはまた無自覚が出ていますよと言った。今は自覚ありますと返せば、少し赤くなっていた。この人ってかわいい。