とびひざ

今日もミナモシティに来ている。ホウエン地方が気に入ったこと、ホエルコを見てみたいということから再度訪れたのだった。

「すごいすごい! 見ましたかペリッパー!」

ぴょんぴょんと今回も跳ねて喜ぶカオ。喜んでいるようでよかったと自然に笑みがこぼれる。浜でハートのウロコ探しをしていたところ、キャモメの群れの中に一匹混ざったペリッパーを指差して大きいかわいいとカオははしゃいでいた。

「よかった。カオさん、元気がないような気がして」
「いやそんな」
「勘違いだったら、謝ります」

カオがウウーンと頭を抱える。マクワに心配させたままは嫌だが、ここで本人に面と向かって話すのは恥ずかしい。

「笑わないで聞いてもらえますか」

こくりとマクワが頷く。

「マクワさんをマクワくんって呼ぶ方が仲良さげに見えるかもと考えていただけで」
「そんなことを」

呆れられてしまうと思いますます頭を抱えて、カオは穴があったら入りたいと祈った。

「解決できない悩みではなくてよかった。そんなことなら、どうぞ」
「ほ、本当?」
「ええ。ぼくはてっきりもっと深刻な悩みかと」
「わあ嬉しい、マクワくん!」

『マクワくん』と呼ばれて、まるでつばめがえしでも食らったかのような恥ずかしさがマクワを襲う。

「ちょ、ちょっとだけ待ってくださいね」

スウと息を吸いこむ。いつものサングラスをかけて、マクワはまた息を吸った。

「どうぞ」
「マクワくん」
「……っ」

かなり、良い。
マクワはたじろぎ、すごいパワーだとサングラスを直した。ファンにくん付けをするひとも多数いるが、これは違う。

「一度言ってしまったら気が楽になりました。これからはマクワくんですね、ふへへ」
「うう」
「マクワくん、マクワくんだ」
「あ、あまりからかわないで!」

浜でそんなことを話しながら、たくさん足跡をつけていく。

その様子を遠くから見ている人影あり。「あれマクワじゃないの」とその人物は驚く。見られたことを知らないまま、マクワは浜を歩いていた。