人の気も知らないで
「んう」
結局またこうなるんだ!
カオがあと少しのところでまた眠ってしまい、おぶって自宅に連れ帰ったマクワ。今彼女は自分のベッドに転がっている。デジャヴのようだが、本当に2回目の出来事なのだ。
ともあれ、今回は前回程の距離ではなかったのが幸いで、すぐに寝込むほどの疲れはなかった。彼女には悪いけれど、きちんとシャワーを浴びてパジャマに着替えてドライヤーで髪を乾かす気力もあった。パジャマ姿でカオの前(寝ているけれど)にいることは初めてで、なんとも変な感じ。髪を乾かしていると、勝手にボールから出てきたゴンベがやって来た。
「あなたも腹ペコですか」
「ごきゅ……」
「大きいポケモン用のフーズで良いでしょうね、ゴンベには。セキタンザンたちのものを少し分けましょう」
ゴンベの食欲を微笑ましく見ていれば、あっという間に皿は空っぽ。満たされたかわからないゴンベはすぐに走りだし、その場を去って行ってしまった。
「あ! ボールに戻ってください!」
また何か食べ物を探しに行くのかと思い、焦り追いかけるとゴンベはイソイソとカオの寝ている布団へ潜り込んで添い寝していた。なんだ寝たかっただけかとホッとする。朝食や他のポケモンのものまで食べられてはたまらない。
「ハッ」
ゴンベの行動に稲妻が走る。そうだ今この状況はとてもラッキーではないかと。ゴンベが添い寝しても起きる様子はないカオ、自分が添い寝すれば良かったじゃないかと今更な思いつきにワナワナとふるえる。そして今まじまじとカオの寝顔を見る、かわいい。この穏やかな顔で眠っている彼女をギューッとしながら眠れたら、きっと幸せだろう。
マクワは迷った。どうしよう、どうしようと本をペラペラ見てみたり、スケジュールの確認をしたり、コーヒーを口にしてみたりと小一時間は迷った。結局、添い寝する勇気も出ずに床に転がり毛布をかけて一人で眠った。紳士の心が勝った。
まだ陽も登らない頃、カオは目を覚ます。この寝心地の良いベッドを自分は知っている、マクワのベッドだ。恐る恐るまた自分が服を着ているかと布団の中を確認する。よかった今回もちゃんと着ているとホッとしているところ、ゴンベも目を覚ました。
「あったかいと思ったらゴンベがいたの」
「きゅ」
夢見心地なゴンベの頭を撫でると、その向こうに視線を移す。マクワの後ろ頭だ、床で寝ている。また人のベッドを奪ってしまったんだとわかり、ズンと気持ちが重たくなった。そっと近づいてみればスウスウとよく眠っていた。
「ゴンベ見て、マクワくんのパジャマよ」
そんな報告をされて、ゴンベはどんな顔をすれば良いのやら。
「まだ寒いし、添い寝しちゃおー」
毛布をめくって、背中にビッタリくっついてみた。あたたかい。くっつくとついでにシャンプーの匂いがする。ゴンベもまだ眠たいのか、カオの背中にくっついて眠り始めた。マクワ、カオ、ゴンベの川の字である。
早朝マクワの悲鳴が部屋に響いた。人があれだけ葛藤してこらえたというのに、いざ起きてみれば彼女が背中にくっついていたのだから。