ライバル

ダンボールにいっぱい詰まったファンレター。贈り物の山。ファンレターをひとつひとつ読んでは返事を書くマクワ。カオはツボツボを抱きかかえながらその様子を見ている。こうしてファンを大切にするからこそ、人気が出ているのだ。今月はファンからのプレゼントが特に多い、なぜなら2月のバレンタインに皆が合わせているからだ。

去年のこと、ジムリーダーたちの中で誰が一番バレンタインのチョコを貰えるかという特集を組んだ記者がいた。そのおかげで、今年も誰が一番になるのか皆が楽しみにしているのだ。

「去年のことがあるから皆が張り切っているわけですね」
「無理をしない程度の応援が、ぼくは嬉しいですね」

マクワは今年はお返しをどうしましょうかとイシヘンジンに話しかけていた。

こっちの方がどうしましょうと悩みたい、カオはツボツボの手をムニムニ触りながら考える。こんなにたくさんのプレゼントを貰っている人に何を渡せば良いのかと。『ありがとうございます』とにこにこしながらファンレターを受け取っているマクワも、自分のお弁当を受け取っているマクワも知っている。きっと何を渡してもにこにこしてくれるとは思うのだが。



「良いですか! 温度調節、グラム、時間、しっかり守って!」
「は、はい!」

パティシエ教室、と言っても素人のために開かれた教室である。バレンタイン前に開かれている季節のイベントだった。本当は高価なものを買ってプレゼントしようと思い店を回っていたのだが、同じものをマクワのプレゼント入れの中でいくつも見てしまったのだ。そこで手作りしか打つ手がないと、こうしてお菓子作りを習いに来たというわけである。

「なんだか汚い……」
「落ち着いてやれば大丈夫、明日またやってみましょう!」

カオは料理は得意であるものの、お菓子作りはさっぱりであった。どうすれば綺麗に仕上げられるのか、味がどうすれば良くなるのか、和食とも洋食とも違う。レシピ通りに作れば誰でも作れるという先生の言葉を信じて感覚を掴むために練習を重ねていた。

「最近忙しそうですね」
「バレンタインに勝利するためです!」
「……? バレンタインに、ですか?」
「相手が相手ですからね、頑張らないと」

マクワには何のことやら。カオが何をしているのか、何を考えているのか知らないのだ。