福小鳥

「いってきます」

そう言ってほっぺにチューされた。
マクワくんはあれからよくチューをする。べつに、ベロベロとやらしいことをするわけではないので、嬉し恥ずかしく受け止めている。お弁当を渡して「いってきます」のキス、夜に別れる時の「おやすみなさい」のキス、慣れはしないけれどあると嬉しい。

ある時に、マクワくんが衣装ダンスの引き出しを開けて「ここを空けましょうか?」と言った。わたしはわからずに「どうして?」と質問で返したところ、マクワくんは赤くなっていた。部屋に転がっていることが多くなったわたしに気を遣ってくれたのに、まったく鈍くて嫌になった。無事に引き出しの一段を貰ったわたしは、着替えも常備できて万々歳である。


「明日は休みだから、今行っても良い?」
『どうぞ』

マクワくんいわく、母や妹弟が突然押しかけている時もあるそうなので一応尋ねることが当たり前になっていた。人目を避けてマクワ宅へ行く、いつもドキドキしながらカメラに撮られませんようにファンに見つかりませんようにと祈っている。

「ユキハミが大量発生してるって」
「久しぶりですね。また寒くなりそうだ」

玄関で靴を脱ぎながらそんなことを話して、ソファーまで一直線。相変わらずのファンレターの山が目に入るこの部屋に、今はもう慣れてしまった。

すでにパジャマのマクワくんに、お風呂お借りしますとヘコッとお辞儀して自分もパジャマに変わる。あれだけチューチューするくせして、マクワくんはいまだに一緒に寝られると照れるらしい。マクワくんは背中を向けて寝るので、背中にくっついて眠る。自分もこの方が寝やすいのでよし。

「マクワくんもう寝た?」
「さてどうでしょう」
「足冷たいの、ホラ」
「あ! ひっつけないでくださいよ!」
「やだ」

冷たい足をマクワくんの足に付ければ、肩を跳ねさせる。こらっと怒られても後ろから抱きしめてしまえば仕方ないですねと許されるので甘えたになってしまう。

「マクワくん」
「はい」
「呼んだだけ、おやすみ」
「おやすみ」

朝起きると必ず、寝癖ぼうぼうのマクワくんがいるので泊まりはやめられない。

今日の卵は双子だった。ラッキー。